テレビ朝日でのテレビ事業の立て直しぶりを確認してみる

2010/05/20 07:14

制作現場先に掲載した【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)】でグラフなどを作成する過程で、キー局の決算短信に一通り目を通した。その際、記事の中で言及した「特異事例」を補完する資料を短信・同補足資料で見つけたり、記事掲載後に読者からの指摘で「なるほど」と再認識できる素材もあった。それらデータのうち今回は、【テレビ朝日(9409)】のテレビ事業におけるお財布事情の変化、立て直しぶりの中身を見てみることにした。

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テレビ朝日のテレビ事業は2010年3月期の中間決算においては赤字を計上していたものの、先日発表された期末決算では大きく黒字に切り替えしていた。

↑ 主要5局の2010年3月期・中間決算における放送事業営業利益(億円)(再録)
↑ 主要5局の2010年3月期・中間決算における放送事業営業利益(億円)(再録)

↑ 主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)(再録)
↑ 主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)(再録)

これについて決算短信本文では、番組の視聴率が堅調に推移した他に、

・収益確保に向けて、積極的な営業活動を展開
・営業費用のコストコントロール
・番組制作費の削減

などを実施した結果、利益を増大させたとある。売上は前年より減少しているにも関わらず、前年の赤字から黒字に転じたのだから、並々ならぬ「費用上の」努力があったことがうかがえる。

それが良く分かるのが、決算説明会資料(PDF)。

ざっと挙げてみても

・レギュラー番組は、平日23時台のネットセールス枠新設、1社提供番組の導入などで増収を図ったものの、全体的な料金ダウンをカバーできず減収。
・番組制作費、経費を大幅に削減した結果、「テレビ放送事業」が増益に。
・番組制作費の大幅削減などコストコントロールにより増益を確保。
・10月改編から早朝・深夜・土日全日帯の編成を見直し。
・各番組の工夫と努力により番組制作費を大幅に削減。
・制作費を前期比146億円削減(個別)のなか、視聴率の競争力保つ。
・人件費含む経費も大幅に削減。
・24時台帯番組「お願い!ランキング」は低制作費で視聴率保ち、収益部門との連携など新ビジネス展開の起点に。

など、売上を伸ばす工夫をしたが思った成果が出ない一方で、制作費を大胆に削り、低コストの番組で視聴率を維持。結果として黒字に転換できる利益をあげたと言及している。

番組制作コストをいかに大胆に削ったかは、次のグラフを見れば分かる。さかのぼれる範囲での過去の決算説明会資料を元に、各年の個別番組制作費を表したものだが、漸増していたコストを2010年3月期にばっさりと切っている。

↑ テレビ朝日番組制作費(個別)(億円)
↑ テレビ朝日番組制作費(個別)(億円)

↑ テレビ朝日番組制作費(個別)(前年比)
↑ テレビ朝日番組制作費(個別)(前年比)

個々の年の特殊事情(例えばオリンピックなどの大きなイベントがあった年は制作費がかさむ)もあるが、概して制作費は上昇基調にあった。それが2010年3月期には16.2%と相当なボリューム(150億円近く)を削減し、収益体質の改善を試みている。他に人件費などの経費も削減しているから、出費はさらに減る。これで黒字転換出来なければ、責任者の首がダース単位で飛びかねないほどの大胆さといえる。



削られたのは
無駄なコストか
必要な経費か。
今はまだ分からない。
ともあれ、テレビ朝日の放送事業が財務面では大幅に改善されたのは、ひとえにコスト意識の向上・費用の削減に尽きることが改めて確認できる。気になるのは日テレやテレビ東京においても言及していた、「制作物である番組そのものの質、集客力や媒体力の低下につながらないか」ということ。質の低下はよほどのことが無い限り、すぐに目に分かるような形で見えてはこないため、気が付いたら後戻りが出来ない状態になっていた……ということも十分にありうる。

補足資料中にも「低制作費で視聴率保ち、収益部門との連携など新ビジネス展開の起点」という表記があったが、これが中長期的なものか、あるいは短期的なものなのかを見据える必要があろう。数年前の資料には「コンテンツ力向上が最優先事項」などの表現に代表されるように「番組の質の向上」を目標に掲げていたのに、直近のものでは費用費用と連呼されているのが気になるところだ。


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