主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(4)放送事業で赤字を出したTBS社と利益が気になる日本テレビ、そしてまとめ

2010/05/16 19:35

テレビ在京主要テレビ局(キー局)で上場をしている5局の2010年3月期(2009年4月-2010年3月)に関する各種財務データをグラフ化して色々と考えてみる企画記事パート4にして最後の回。ここでは放送事業で赤字を出したTBSと、他局と比べて利益率・額が群を抜いている日本テレビについて、気になったことを書き記すことにする。

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本業で赤字を出したTBS
2010年3月期・中間決算において、放送事業の営業利益でマイナス、つまり赤字を出したのはTBSのみ。他の4社は黒字を計上している。

主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)
主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)(再録)

TBSにおいて、事業区分(セグメント)別に売上と、営業利益率(どれだけ効率よく稼げるか)を示したのが次のグラフ。

TBS(9401)の2010年3月期決算におけるセグメント別売上高(億円)と営業利益率
TBS(9401)の2010年3月期決算におけるセグメント別売上高(億円)と営業利益率

一応TBSはテレビ放送事業がもっとも「売上」は大きい。仮にこれが一番で無い場合、放送法における「主たる事業」に該当しなくなる(と判断される可能性がある)ため、放送免許を取り上げられる場合もあるから、事は重大。

しかしながら放送事業はまったく利益を生み出さず、他の事業の方が「稼ぎやすい」構造になっているのが分かる。放送事業とはあまり関係・関連の無い不動産事業の利益率がずば抜けて高い状態にある(その他事業も「調査・研究等」とだけ説明があり、放送事業とあまり関係はありそうにない)。一方で、関係が多分にある「映像・文化事業」は利益率が4.4%と、決して高くは無い。

ここ数年のTBSの動向から「不動産放送局」「テレビ放送事業も行っている不動産企業」と揶揄する表現もあるが、あながちその指摘は的外れではない。

日本テレ奮闘中!?
もう一つ気になったことは、日本テレビ放送網の数字の突出ぶり。放送事業の営業利益・営業利益率共に、他の4局とは別世界の数字であるかのようだ。

主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)
主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益(億円)(再録)

主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益率
主要5局の2010年3月期における放送事業営業利益率(再録)

これはひとえに経費の並々ならぬ削減によるもの。今期決算短信でも、

費用の面では、売上原価と販売費及び一般管理費を合わせた営業費用は、番組改編に伴い番組制作費の削減に取り組んできたことやテレビ放送事業の売上高の減少に伴い代理店手数料が減少したこと、その他全ての費用項目において業務改善による圧縮を行ったことなどにより

と言及されている。

元々日本テレビ放送網は比較的利益を生みやすい構造を有していた。それは過去の決算短信を見れば把握できる。

↑ 日本テレビ放送網(9401)の「売上区分:放送事業」における売上と費用、営業利益、売上高営業利益率(金額単位は億円)
↑ 日本テレビ放送網(9401)の「売上区分:放送事業」における売上と費用、営業利益、売上高営業利益率(金額単位は億円)

↑ 日本テレビ放送網(9401)の「売上区分:放送事業」における売上と費用(前年比)
↑ 日本テレビ放送網(9401)の「売上区分:放送事業」における売上と費用(前年比)

直近期では大幅売り上げ減を目の前に、それ以上に営業費用を削り、その結果利益増大・利益率アップという結果を導いている。

経費削減をして体質を引き締めるのは悪くない。ただし度を過ぎたダイエットが健康に害を及ぼすのと同じで、大ナタを振りおろしたら本体が真っ二つに割れてしまいかねない。以前【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる……(2)業績斜め読みと広告売上、利益率の変化】【日本テレビのタイム・スポット広告の変化をグラフ化してみる】でも触れた、日本テレビにおいて「経費削減のマイナス作用が出始めているのではないか」という懸念がある。

■日本テレビ放送網
…タイム広告の減少幅が大きい
→個々の番組の魅力急降下
→経費削減の副作用の可能性
中間期のまとめ【主要テレビ局銘柄の直近中間決算をグラフ化してみる…(4)放送事業で赤字を出した2社と気になること、そしてまとめ】で指摘した件が、期末決算では日本テレビにおいて顕著化しつつあるように見える。他に問題を抱えているTBSを除けば(TBSはスポット広告も絶賛減少中のため、放送事業全体・体質レベルで問題があるようだ)、キー局では日本テレビがタイム広告でもっとも大きな減少率を見せているからだ。

直接の因果関係を証明するデータは無いが、「経費削減がキツ過ぎたあまり、個々の番組の魅力・媒体力が減少し、それがタイム広告の出稿の大幅減につながったのではないか」(言い換えれば「経費ケチりすぎたせいで番組がつまらなくなった」)とする懸念がさらに強くなった感は否めない。

今件について記事執筆時にツイッターでフォロワーの方々に尋ねてみたところ、

「日テレはセットやロケが少なくてスタジオ収録の番組が多いような。ただ、出演タレントは多いので、そのギャラがどうなのか?」
「仮装大賞の審査員が半分に、賞金も半分に。 2009年は鳥人間コンテスト開催せず。看板番組ですらこのありさまです」
「大物司会者が局アナに?」
「日テレ・西尾アナ、夏目アナ、葉山アナらが大減給!?(【日テレ・西尾アナ、夏目アナ、葉山アナらが大減給!?(Entame Watch)から】)」

など、実情をかいま見れる情報を短時間で多数いただくことができた。確かにここまで経費削減を徹底すれば、利益率増大は可能。視聴者が見聞きしているだけでもこれだけすぐに挙げられるのだから、内部ではさらに涙と汗による経費削減が行われているに違いない。

お金をかければ良い番組が出来、経費をケチれば魅力のない番組しかできない、というわけではない。経費と番組の質が正比例するわけではない。しかし「経費の多い少ない」は同時に、番組の質を決める重要な要素になることは間違いない。以前の記事の繰り返しになるが、この推論が正しいとすれば、今後この傾向はますます拍車がかかるようになり、両局の経費削減・リストラ策は「短期的には業績の上でプラスの効果を生み出しても、中長期的には大きな痛手となる」可能性を秘めていることになる。



今回の一連の記事を箇条書きにまとめると次のようになる。

・全局とも番組への広告売上は減少。前年同期比ではスポット広告以上にタイム広告の売上減少率が著しい。個々の番組そのものへの媒体力、魅力が減少していると広告主に判断された可能性がある。番組構成そのものの危機。
・キー局5局のうち日本テレビ放送網とテレビ朝日、テレビ東京はコストカットを推し進め、売上が減少しているにも関わらず、前年比で利益をさらに上乗せ押せすることに成功した。
・TBS、テレビ東京はスポット広告の減少もいまだに続いている。
・TBSは放送事業「以外」の事業、不動産業への財務的偏りが継続中。
・TBSは、本業では利益をあげられない状態に。

テレビ局の月次報告書に目を通すと、スポット広告は少しずつ下げ幅を縮小、一部では前年同月比プラスの月も見えるなど、薄日が差してきた感がある。しかしその分、テレビ番組の命綱として非常に大切なタイム広告が、スポット広告以上に「全局」大きく減っている。

テレビイメージ百歩譲ってスポット広告の減少時には「不景気だから効果計測が難しい、効用が薄めに見えるスポット広告を減らすのは仕方ないよね」と後解釈をすることも出来た。しかしタイム広告の減少は、景気云々以上に個々の番組に対する魅力への疑問符が、各広告主から打たれたことになる。そして個々の番組の魅力、すなわち存在価値が否定されれば、各番組を構成要素とするテレビ放送そのものは成り立たなくなるし、それは必然的にテレビ局そのものの生命線が断たれることを意味する。

例えるならピザ専門店で、これまではアイスやポテト、チキンなどの副惣菜・デザートの売上が落ちていたところ、今度は主力商品のピザそのものが売れなくなったようなもの。繰り返しになるが、利益・売上の金額そのものの減少以上に、事態は重大さを増している。番組の質の低下は数字としては金銭面のように「即時」には表れないが、少しずつ、そして確実に影響が生じてくる。そして失われた質や誇り、人材など様々な、そして貴重な「財産」は取り戻すことは容易ではない。

海外メディアの例を見れば分かるように、テレビや新聞などの旧来メディアは黙っていても他メディアの進化発展浸透で、身が削られるような状況にある。その中で例えるなら、種モミを食卓に並べたり、農機具を売り払って得たお金で財布の中を満たしたのでは、今は幸福でも未来が見えてこない。「新しい種モミの手配をしてある」「新型の農機具を予約した」などのような、将来に向けた明確なビジョンがあれば話は別だが……

(終)

■一連の記事
【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(1)業績概要】
【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(2)各社業績斜め読み】
【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ】
【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(4)放送事業で赤字を出したTBS社と利益が気になる日本テレビ、そしてまとめ】

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