環境対応車両への減税措置などが功を奏す…2010年4月景気動向指数は5か月連続の上昇、先行きも5か月連続の上昇

2010/05/15 12:00

内閣府は2010年5月13日、2010年4月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状は5か月続いて上昇した。先行き指数も5か月連続の上昇傾向を見せている。基調判断は「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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やや「良くなっている」が増加
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年4月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス2.4ポイントの49.8。
 →5か月続いての上昇。「やや良くなっている」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。
 →家計においてはエコポイントシステムの変更による駆け込み需要の反動があるものの、環境対応車両への減税措置などが功を奏したことなどにより上昇。企業は原材料価格の上昇があるものの、受注などが持ち直しを見せていることから上昇。雇用は企業側態度が慎重ではあるが、一部で求人に動きがあったことから上昇。
・先行き判断DIは先月比プラス2.9ポイントの49.9。
 →5か月連続のプラス。
 →家計ではガソリン価格の上昇に対する懸念はあるが、子供手当の支給や環境対策自動車の購入にかかわる減税・補助金制度の継続への期待でプラス。企業では原材料価格の上昇に対する懸念はあるが受注増への期待で、雇用では一部で求人の動きがあることから上昇。
先月に続き、前政権の政策を継続したことによるマインドの微増や、自然回復的な要因が少なくない。また、ガソリン価格をはじめとする「原材料価格の上昇」という文言が複数用いられているのが気になる。

企業はすべて50超え
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では住宅関連が先月比でマイナス。それ以外はすべてプラス。企業動向関連・雇用関連ではすべて50を超えたことが確認された。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いている。今月も、5か月前に見せた「ジェットコースター感覚の下落」と比べれば勢いは緩やかではあるものの、上昇しているのが分かる。

・今年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続?
・「去年と比べれば」感?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレすら許されなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。今更ながら一部で「当時の日本の政策が悪かった」という意見もあるが、鎖国状態ならともかくグローバル化が進む中、一国があがいてもどうにかなるものでは無い(逆に周辺国がそれなりでも自国で失策が続けば、自国のみ経済が軟調な状況はありうる)。

今年に入ってからの動きは、2001年後半以降の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」なら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では6か月前に見られた「直近における天井感からの下落」の傾向がひとまず停止し、反発を見せている。さらに6か月前の時点で「交差」現象は確認済み。前回の傾向を踏襲するとすれば、(前回の2003年後半期になぞらえれば)そろそろ雇用の数字が大きく跳ねて天井観を演出するのだが……。周囲を見渡しても、雇用情勢が回復しているようには考えにくく、前回とは違ったパターンを進む可能性も否定できない。ただし数字自身はその前兆を見せているようでもある。

景気の先行き判断DIについても、先月同様に増加した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目数だけとなり、さらに2項目で基準値の50を与える項目が出てきた。特に雇用関連は大きな伸びを見せている。


2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた(青線部分)。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが分かる。

今月は全体的にプラスを見せ、雇用指数の跳ねあがりも確認できる。2003年中-下旬期の状況に類似しているようだ。もしそのままのパターンを踏襲すれば、雇用指数はさらに上乗せされ、その他の指数はほぼ横ばいを継続することになる。

現状は「前と比べて」感、先行きは意見が分かれる
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・低温や天候不順の影響で衣料品が苦戦するものの、来客数、客単価共に3か月前に比べて上向いている(百貨店)。
・既存店ベースで売上高が前年同期比100%を超え、徐々に回復基調にある。衣料品は一部の機能性素材のものを除き、相変わらず90%台前半だが、食品は天候不順で高騰した野菜を除いても前年同期比103%を超え、復調の兆しがみえる(スーパー)。
・昨年夏からずっと売上の前年割れが続いてきたが、今月は少し下げ止まった感がある。ただ、景気回復によって景気が上向いたというよりは、消費者が際限なく節約し続けることが限界に達したせいだと感じる(高級レストラン)。
・観光客のレンタカー利用は、前年同期を上回ったものの、稼働単価が下がっており、決して良い状況ではない。安価な旅行商品しか売れていない現状だと推測される(その他のサービス)。
・前年よりも状況は良いものの、3月のエコポイント対象商品の変更前の駆け込み需要の反動が大きく、数字的にはやや物足りない状況となっている(家電量販店)。

■先行き
・ボーナス時期で補助金制度の期限も近づき、駆け込み需要が見込める(乗用車販売店)。
・住宅版エコポイント制度やローン減税など、購入を後押しする政策が多く、今後に期待できる。また、地元大手自動車メーカー関連で黒字化している企業も数社あり、消費者マインドの改善を客からも感じ取れる(住宅販売会社)。
・子ども手当の支給に一時的な効果は期待できるものの、景気の先行きが不透明なために、不安定な消費活動はしばらく続く(その他専門店)。
・高速道路料金の変更について政府の結論が出ないため、客が二の足を踏んでいる状況なので、見積問い合わせはあっても結果としてまだ表れていない(旅行代理店)。
・消費マインドの冷え込みからの脱却を期待できる要素が見当たらず、ガソリン価格の値上げ傾向の継続は出控えの要因ともなり、消費者の支出抑制傾向はまだ続く(遊園地)。
などとなっている。景気回復感を具体的に裏付ける証拠を見出せないが、何となく売れ行きが伸びている感があるというところ。「消費者が際限なく節約し続けることが限界に達したせい」という興味深い表現も見受けられるが、一言で例えれば「節約疲れ」になるのだろうか。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、政治要因を起因とする
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は続く。
「節約疲れ」など、心理的に
「苦境に疲れた」ことによる反動が
消費性向を底上げ?
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する様相。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと推定される。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中。実証されつつあるこの仮説が正しければ、今後は2003年中盤以降のパターン「雇用指数の上向きと、企業・家計紙数のもみ合い」を踏襲することになる。

現状値そのものやコメントを見れば分かるように、現時点では昨年のリーマンショックにおけるどん底に慣れた感もあり(さらに国内外の経済的にネガティブな情報の配信が抑えられている感もある……昨年夏までとは打って変わって)、マインド的にはやや持ち直しを見せている。しかしちょっと目を凝らしてみれば、具体的な指標、例えば国内なら株価、国外なら欧州の債務問題など看過できない問題は山積みで、綱渡りの上での「持ち直し感」であることが理解できる。

多少手間と時間はかかるが自分がいつも接しているものだけでなく、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先をかいま見ることをお勧めしたい。自分の判断をより確実なものとする、新しい情報が得られるに違いない。

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