薄型テレビの駆け込み需要に対する反動…2010年3月景気動向指数は4か月連続の上昇、先行きも4か月連続の上昇

2010/04/08 19:30

内閣府は2010年4月8日、2010年3月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状は4か月続いて上昇した。先行き指数も4か月連続の上昇傾向を見せている。基調判断は厳しいものの先月よりはやや緩和した表現である「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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やや「良くなっている」が増加
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2010年3月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス5.3ポイントの47.1。
 →4か月続いての上昇。「やや良くなっている」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。
 →家計においてはエコポイントシステムの変更を間近に控えた駆け込み需要、環境対応車両への減税措置などが功を奏したことなどにより上昇。企業は販売価格の引き下げ圧力は強いが、受注などが持ち直しを見せていることから上昇。雇用は企業側態度が慎重ではあるが、一部で求人に動きがあったことから上昇。
・先行き判断DIは先月比プラス2.2ポイントの47.0。
 →4か月連続のプラス。
 →家計では薄型テレビの駆け込み需要に対する反動への懸念はあるが、子供手当の支給や環境対策自動車の購入にかかわる減税・補助金制度の継続への期待でプラス。企業では受注増への期待で、雇用では一部で求人の動きがあることから上昇。
先月に続き、前政権の政策を継続したことによるマインドの微増、さらには駆け込み需要が主な要因となっている。唯一新しい文言としては「子供手当」があるが、対象が限定される上に「栓がふさがっていない風呂桶」状態であること、代替分の負担増も予定されているのが気になるところ。

現状は50超えがあらわる、先行きは頭打ち感強し
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分でも幸いにも先月比でマイナスのものは無し。家計・企業で伸び率はほぼ同列だが、数字そのものは全項目で40を超えており、雇用関係は50を超えたことが確認された。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いている。今月も、4か月前に見せた「ジェットコースター感覚の下落」と比べれば勢いは緩やかではあるものの、上昇しているのが分かる。

・今年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続?
・「去年と比べれば」感?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレすら許されなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。今更ながら一部で「当時の日本の政策が悪かった」という意見もあるが、鎖国状態ならともかくグローバル化が進む中、一国があがいてもどうにかなるものでは無い。

今年に入ってからの動きは、2001年後半以降の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」なら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では5か月前に見られた「直近における天井感からの下落」の傾向がひとまず停止し、反発を見せている。さらに5か月前の時点で「交差」現象は確認済み。前回の傾向を踏襲するとすれば、(前回の2003年後半期になぞらえれば)そろそろ雇用の数字が大きく跳ねて天井観を演出するのだが……。どう考えても雇用情勢が回復しているようには見えず、前回とは違ったパターンを進む可能性も否定できなくなってきた。

景気の先行き判断DIについても、前回よりさらに伸び方を縮めたものの、増加した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

現状判断同様にプラス項目数だけとなったものの、伸び率がさらに落ち込んでおり、天井観が強くなっている。現状指数より先行き指数の方が低いという状況は「見通しの暗さ」を意味しており、残念な話ではある。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、ただでさえ大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが分かる。

今月は全体的にプラスを見せたが、具体的要件を確認する限りにおいては、現状指数とは異なり、未だにリバウンドの域を出ていない。企業の値に50を超えるようなものが出てくれば、回復度もホンモノなのだが。

そしてしばしば触れているが、「現状」同様に景気の上昇・安定時における「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、そのシグナルとなるクロス・逆転現象が「先行き」でも確認できている。今月は5か月前のコメントで予測した通り、「現状」「先行き」共に、景気動向が次なるステップに進んだとほぼ断じてよい。つまり、しばらく上昇・下落を繰り返しながらの低迷が継続するということだ。ただ昨今の触れかたはパターンをたどるというより国内外の情勢に大きく左右されるところが多い感もあり、予断を許さないところではある。また、一説として前回パターンと比べると期間がかなり圧縮されている可能性もある。

今月の上昇で、4か月前に懸念された「大規模な下げを起因とする景気の『底抜け』感」は回避された雰囲気が見られる。ここまで戻れば、先の急降下の分は取り返したところか。とはいえ、諸外国と比べれば「周遅れ」的なところは否めない。いわばマラソンのスタート地点でスタート直後に紐靴のヒモを10分ほど一生懸命につけ直していた状態。

現状は「前と比べて」感、先行きは意見が分かれる
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・3か月前に比べて新規の問い合わせが増えており、需要が高まっている(その他住宅[リフォーム])。
・婦人物ファッション商品の売上が大変良くなってきた。トレンド商品のジャケットや花柄プリント等の動きが良く、昨年の春物とは、けた違いに良くなっている(百貨店)。
・客単価は徐々に下げ止まっており、底が見えてきたが、依然として国内ツアー客を中心に来客数が伸び悩んでいる。一方でアジアを中心とする外国人観光客は回復傾向にある(観光型ホテル)。
・プレミアム付き商品券の大きな効果はなく、天候要因もあって売上は低迷している。ただし、買上単価には下げ止まりの傾向がみられる(スーパー)。
・緊急値下げ等、予定外のセールまで実施する同業者が増えている(その他専門店[靴])。

■先行き
・住宅取得資金の贈与に係る非課税枠拡大のほか、住宅版エコポイントの受付も始まり、客の関心も高まっているため、住宅の潜在的需要の喚起につながる(その他住宅[展示場])。
・子ども手当の支給により、効果の一部が外食にも回ってくることが期待されるほか、中国人富裕層を始めとした海外客の増加が国内の不景気によるマイナス分をカバーすることが期待されるが、全体としては厳しいまま変わらない(高級レストラン)。
・減税と補助金に下支えされながら販売している状況で、決算期も終わり、客の様子見の期間が増える。景気がまた上向いていくのは7月以降である(乗用車販売店)。
・この3か月ほどエコポイントのテレビによる需要が非常に盛り上がったので、その分の反動が4-6月と必ず出る。大きな流れとしてはやや良くなるという状況であるが、この4-6月は反動減となるため家電需要は冷え込む(家電量販店)。
など、現状判断は「昨年と比べれば」「以前と比べれば」という比較論として、あるいはリーマンショックによる影響があまりにも大きかったこともあり、リバウンド的回復感を満喫している、あるいは底打ち感が印象的。のど元過ぎれば……という話かも。一方で先行き感では今まで以上に先が読みづらい状況にあり、見通しも真っ二つに分かれている。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、政治要因を起因とする
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は強まり、
前回不況パターンと同じ道を
歩むことになるのか。
先行きが見えないのが痛い。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているように、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する様相を見せている。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと推定される。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中。

実証されつつあるこの仮説が正しければ、「すでに最大の底値は脱しており、今後は比較的短期の再下落を経て、横ばい・回復基調が続く可能性は高い」……というのがこれまでのこの部分での文面パターンだったが、今回現状指数で1項目だけだが50超えが確認され、それが雇用関連の数字だったことから、「比較的短期の再下落」がすでに昨年末の急降下で起きてしまっている可能性が出てきた。この説が正しければ、今後雇用関連の値はさらに上向くものの、その他の数字は横ばいを続けるパターンとなる。

しかし複数の調査機関の調査結果からも、昨年夏以降は政局・政策・金融市場の観点で、控えめに表現しても「混乱を起因とした不安感の助長と、その結果もたらされる景気後退」にあることが数字となって表れている(【「給与が1年前と比べて減りました」男性は49.0%・女性は37.2%】【労働時間は変わらず、自宅にいる時間は増え、趣味にも時間を費やせず…進む「巣ごもり化」現象】などを見れば分かるように、昨年夏-秋以降、明らかに「流れ」が変わったのが改めて確認できる)。

現状値そのものやコメントを見れば分かるように、現時点では昨年のリーマンショックにおけるどん底に慣れた感もあってか、マインド的にはやや持ち直しを見せている。しかし例えば【職種別有効求人倍率をグラフ化してみる(2010年1月更新版)】を見ればお分かりの通り、各種統計値で昨年より状況が悪化している項目も多いことを鑑みると、心理的なブラインドがめくられた後に再び各指標が急落するリスクは否定できない。

今後は海外・国内を問わず経済・政治動向を各自が見極め、既存の概念や過去の情報収集ツールが発する情報に振り回されることなく、「正しい情報」を元にした正しい判断を自分自身の頭で行う必要がある。「おや?」と思ったら躊躇することなく情報のソースをたどり、自分の頭を使って考えねばならない。さもなくば「講釈師」の舌先三寸の言葉に惑わされ、濁流に飲み込まれることになる(その時「講釈師」たちはちゃっかり救命ボートに乗っていることだろう)。

そして景気の流れを慎重に見守り、自分の責任と信条に従い、行動することが欠かせない。情報が多分に流され、それらにもまれる時代だからこそ、自我をしっかりと持ち、考える能力を身につけねばならないのである。

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