主要テレビ局の第3四半期決算短信から有望性を試算してみる…(4)成長率とまとめ

2010/04/04 19:35

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試算中の様子その4【日経新聞の決算短信から有望性を試算してみる】【お財布事情は毎日が一番……主要新聞社の短信から有望性を試算してみる】のように、『週刊東洋経済の2010年3月20日号「データが読めれば、経済がわかる!」』を元にした指標を計算し、在京キー局の上場テレビ局5局をチェックする記事パート4。最後となる今記事は「成長率」の項目、そして簡単なまとめについて。


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成長率について、まずは売上高伸び率。これは単純に売上高の面で直近期がその1年前同期と比べてどう変わったかを示すもの。モノが売れても利益が出なければ何の意味もないが、まずは売れていた方が成長感はある。

↑ 売上高伸び率
↑ 売上高伸び率

フジ・メディア・ホールディングスだけがプラスを見せている。グループ会社の相乗効果が功を奏したようだ。似たような会社構造のTBSホールディングスも、売上高前年比マイナス組ではもっとも痛みが少ない。

一方、先の記事で「売上高営業利益率が断トツ」だった日本テレビ放送網はテレビ東京に次いで売り上げが低迷している。この二つから「売り上げは落ちたけどそれ以上に経費を落としたので利益率が高まり、利益をあげた」日テレの事情がかいま見れる。

最後に固定資産投資の変移。これは減価償却額から有形・無形の固定資産への投資額を差し引いたもので、プラスならその年は将来に向けた投資を(資産の形で)積み増している、マイナスなら逆に過去の資産を食いつぶしている計算になる。

↑ 固定資産投資(百万円)
↑ 固定資産投資(百万円)

フジメディアのがっつり下げ具合が気持ちいいほど。まとめで改めて触れるが、とりあえずグループ化した関連企業の再構築の最中で、余計なぜい肉を落としているため、投資以上に減価償却が目立つようだ。それにしてもプラス企業がゼロとは、やはりどのテレビ局もお財布事情が芳しいとは言い難いのか。



……と、都合9つの指標を算出し、各局のデータを比較した。それぞれの局毎の特性を推測すると、

・日本テレビ放送網
 財務的安定度高い。【主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(4)放送事業で赤字を出した2社と気になること、そしてまとめ】にもあるように短期的視野で利益体質の確立を図っている? 利益率は抜群だが、売上高の減少が気になる。
・TBSホールディングス
主副の区別がつきにくい副事業、特に不動産事業で流動性の低さを招いている。収益をあげているうちは良いが、この事業が足を引っ張りだすと……。
・フジ・メディア・ホールディングス
 財務的には安定。TBSと同じく持ち株会社だが、その図体が大きくなり過ぎて現在ダイエット中か。傘下企業が相乗効果を生み出すどころか(財務的に)足を引っ張っている感が強い。
・テレビ朝日
 売上高の落ち込みは看過できないが、全般的なバランスに優れている。キー局の中では一番健全。
・テレビ東京
 持ち株会社化や大型の副事業をしているわけでもないのに手元流動性が低いのが気になる。売上高の落ち込みが激しいのも一因。

などとなる。また全般的に

・持ち株会社(いわゆる認定放送持株会社であるTBSとフジ)の2社は本来の相乗効果への期待が裏切られている形に。体力温存か、あるいは大規模な再構築中か。
・少なくとも連結決算の上では、よほどのトラブルが発生しない限り、この一、二年で財務的に破綻しそうな雰囲気は無い。

などの傾向が確認できる。

個別、すなわちテレビ事業本体については、期末決算短信が出た後に精査をする予定(ただし個別ではキャッシュフロー計算書が無いようなので、一部指標は省略することになるかも)。ただ今回の連結3Q決算上で上記のように「企業グループ全体としては、破綻云々は考えにくい」であることから、万一テレビ事業(や新聞事業)の首が回らなくなっても、グループ企業全体で補完する可能性は高い。

その場合、新聞はともかくテレビ事業が主たる事業なのか否かという問題も生じてくるに違いない。


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