お財布事情は毎日が一番……主要新聞社の短信から有望性を試算してみる

2010/04/02 19:45

有望性試算先に【日経新聞の決算短信から有望性を試算してみる】で、『週刊東洋経済の2010年3月20日号「データが読めれば、経済がわかる!」』を元に、日本経済新聞社の直近決算短信について分析・有望性の試算をした。今回はその際作成した計算式を元に、他の主要新聞社の短信データを入力し、同じように有望性を計算してみることにした。

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まず、日経新聞社以外の短信取得から始まるわけだが、次のような状況となった。

■毎日新聞社
【半期が赤字に転落した毎日新聞の最新版「おサイフ事情」をチェックしてみる】を参考に、EDINETからデータを取得。最新の短信は2009年12月24日の半期報告書(第33期・平成21年4月1日-平成22年3月31日)。

■朝日新聞社
同上。2009年12月16日の半期報告書(第157期・平成21年4月1日-平成22年3月31日)が最新の短信。

■産業経済新聞社(産経新聞)
社内サイトにて公開されている。最新は【平成22年3月期 中間決算短信(PDF)】

唯一発行部数1000万部をキープしている読売新聞だが、【半期が赤字に転落した産経新聞の最新版「おサイフ事情」をチェックしてみる】の終わりの部分で触れているように、読売新聞グループ本社の決算短信は公開されている。最新のものは【こちらになる(PDF)】。しかし見ればお分かりのように、非常にシンプルな数字でしかなく計算式を埋めるだけの項目は用意されていない。オマケに公開されている読売新聞グループ本社は名前の通り、読売新聞東京本社や読売新聞西部本社など実働会社を束ねる管理会社でしかなく、実働会社の方はEDINETにもデータは非公開となっている。よって今回は計算を断念せざるをえなかった。

なおリストを見ればお分かりのように、毎日新聞社・朝日新聞社・産経新聞社共に中間短信の値を採用している。年度内期間属性などもあり、日経新聞とそのまま比較するのはやや酷な感もあるが、時期の統一性を優先して今回は中間短信の数字を採用した(もちろん半年分という期間の長さ上の不利が生じないよう、諸修正は施してある)。

気を取り直して。まずは流動比率について。これは1年以内に得られる現金その他同等物を、同じく1年以内に返済すべき負債で割ったもの。100%を下回るといわゆる「自転車操業」になる。

↑ 流動比率
↑ 流動比率

前記事にもあるように、この値は多少の余裕を持って120%以上が望ましい。だが、日経と朝日はクリアしているものの、毎日・産経は危ないラインに。

続いて手元流動性。現預金・有価証券を足したものを月商で割ったもので、この数字が低いと、資金繰りに窮している形となる(流動比率より一層短期間の「資金繰り」度のようなもの)。1(か月分)以上が望ましい。

↑ 手元流動性
↑ 手元流動性

毎日新聞がボーダーラインの1か月分を割り込んでいるのが確認できる。

自己資本比率。一般の上場株式会社でも良く話題にのぼる値。15%以上が望ましいとされるが、業種によって多分の違いが生じてくるので一概にはいえない。ただし今回は同業種内での比較のため、相対的な位置づけはできる。

↑ 自己資本比率
↑ 自己資本比率

毎日新聞の財務的な危うさはすでに知られる通りだが、それ以上に産経新聞も危険ラインに達している、少なくとも日経や朝日よりは綱渡り状態なのが確認できる。

売上高営業利益率は、当サイトの分析でもよく出てきた値。要は売上高に対してどれだけ利益をあげられるかを示したもの。この値が大きい方が、効率的に商売をしていることになる。

↑ 売上高営業利益率
↑ 売上高営業利益率

日経・朝日・毎日は営業赤字を出しているので当然マイナス。意外(!?)なのは産経新聞が黒字を出し、数字をプラスにしていること。財務諸表を良く見ると、売り上げは(後述するように)大きなマイナスなのだが、それ以上に経費削減を果たし、結果として利益を抽出することに成功している。例の「押し紙問題との決別」の動きは本当なのかもしれない。

在庫回転率……は計算したが、先の日経新聞がやや悪化している以外はどの新聞社もほとんど変わりがないので省略。ただ、後述するように気になる数字が見受けられる。

続いて売上高の伸び率。

↑ 売上高伸び率
↑ 売上高伸び率

意外(!?)にも毎日新聞の下げ幅が少ない。とはいえ、どの企業もマイナス値に違いは無く、市場が縮小している事実を反映したものとなっている(【読売1000万部確保、毎日は前期比マイナス1.75%…新聞の発行部数などをグラフ化してみる(2009年分データ更新・補完版)】)。

最後に固定資産投資。これは減価償却額から有形・無形の固定資産への投資額を差し引いたもので、プラスならその年は将来に向けた投資を(資産の形で)積み増している、マイナスなら逆に過去の資産を食いつぶしている計算になる。

↑ 固定資産投資(百万円)
↑ 固定資産投資(百万円)

日経以外は全部マイナス。財務的に健全そうに見えた朝日新聞のマイナス値が一番大きく、投資をセーブしていたようすがうかがえる。もっとも同社の場合、グループ会社の再編問題があるのも理由かもしれない。



以上駆け足で各指標を見たが、結果を箇条書きにまとめると、

・新聞の売り上げはどこも軟調
・財務的には日経新聞と朝日新聞が比較的健闘、毎日と産経はかなりリスクが高い状態
・朝日、毎日、産経は過去の資産を食いつぶす形で何とか現状を維持している
・産経新聞は相当な経費削減を果たしたようで、この状況を維持、さらに改善できれば財務的には同列の毎日新聞よりも見通しは明るい
・総合的に判断すると4社内では毎日新聞が一番リスキーな状態

などとなる。ただ、前述したように朝日・毎日・産経は半期の状態を元にしたものなので、後日決算短信が出そろった時点で再度精査をしなければならない(宿題)。

また、気になったのが朝日・毎日新聞社の貸借対照表中「資産の部」における、流動資産項目の「その他」の金額。この額の大きさがいくつかの指標に影響を与えているのだが、非常に大きな額となっている。例えば朝日新聞は209億2600万円(現金は805億9100万円)、毎日新聞は93億6800万円(現金は38億6100万円)。現金や預金、受取手形、売掛金、棚卸資産、貸倒引当金のいずれもに該当しない流動資産とは何なのだろうか。ちなみに日経や産経新聞はこの「その他」の項目に該当する額はほとんどない。

特に他社との売上高の変化の違いとも関連していそうな気もする、現金の3倍近くも存在する毎日新聞の「その他」の流動資産の中身を見てみたいものだ。……いや、手持ち現金の額が少な過ぎるのか?

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