年金生活をしているお年寄り世帯のお金のやりくりをグラフ化してみる

2010/03/21 19:25

高齢者の家計イメージ先日から【お財布に優しい「もやし」はやっぱり売れてます……もやしの購入度合いをグラフ化してみる】【Wii本体と『ドラクエ』『マリオ』特需がはっきりと・家計でのテレビゲームへの支出動向をグラフ化してみる】などで2009年の【家計調査速報】のデータを精査している。ここには報告の大まかな流れをつかみ取るための解説として「概況」も掲載されている。家計調査を通じて消費者や社会全般の動きをかいま見れる、非常に役立つ内容といえる。今回はその中から、平均的な高齢者世帯におけるお財布事情についてスポットライトを当ててみることにした。

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中には生涯現役の人、あるいは一度定年を迎えて再就職を果たす人もいるだろうが、多くの人は60-65歳で定年を迎え、その後はそれまでの貯蓄を切り崩したり、年金(ここでは社会保障給付)で生活することになる。「家計調査」では実例として、2009年における平均的な「60歳以上の単身無職世帯(元々独身か、相方に先立たれたか離別して一人暮らしをしている60歳以上の無職の人)」「高齢夫婦無職世帯(夫は65歳以上、妻は60歳以上でその世帯には二人きり・無職)」それぞれのパターンにおける家計収支が描かれている。そのうち収入面を抽出したのが次のグラフ。

↑ 高齢者世帯の家計収支
↑ 高齢者世帯の家計収支

例えば単身世帯の場合は年金が約11万1000円。それに加えて毎月1万円くらいの収入(「無職」が前提なので、利息なり証券の配当などだろう)。あわせて約12万円が実質的な収入。しかし非消費支出(税金・社会保険料など)と消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)は合わせて15万1939円のため、足りない3万0992円をどこからかねん出する必要がある。基本的にこれはグラフの説明にあるように、これまで貯めてきた貯蓄からの切り崩しでまかなわれる。

同様に高齢夫婦無職世帯の場合は、年金が約21万円、その他の収入が1万6000円。貯蓄の切り崩しが4万円強で合わせて26万6000円強が、月あたりの入金合計額となる。

注意すべき点は、どちらのパターンの世帯でも、毎月2割強の貯蓄切り崩しをしていること。支出面のグラフ化は、例えば60歳以上単身無職世帯の場合は次のようになる。非消費支出がこれとは別に1万2470円発生していることに注意されたい。

↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(13万9469円)
↑ 60歳以上の単身無職世帯における消費支出の内訳(13万9469円)

これを見ても分かるように、新たに貯蓄をしていることは無いので(使うお金が足りないから貯金をおろしているのに、同じ月に同じ口座へ貯金をするのは非論理的)、一方的に貯蓄額が減ることになる。

無職高齢者の家計貯蓄率はマイナス
さてせっかくなので、該当世帯における、いわゆる「家計貯蓄率」について算出してみることにする。概念的には家計貯蓄率とは「一か月の収入のうちどれだけを貯蓄に回せるか」というもの。大きく次のように分けることができる。

・内閣府の国民経済計算における「家計貯蓄率」
 ……家計全体の可処分所得から、家計全体の最終消費支出をマイナスし、年金基金準備金の増減を調整。その値を可処分所得と年金基金準備金の増減の合計で割ったもの。マクロ的な考え方によるもので、高齢者、無職世帯など、勤労所得者以外も含んでいる。2008年度では3.3%。

・総務省の家計調査における「平均貯蓄率」
 ……貯蓄純増(預貯金と保険の純増減の合計※)/可処分所得×100
 ※この合計額は経済学で通常呼ばれる「貯蓄」とは概念が異なる、という意見が多い

・総務省の家計調査における「黒字率」
 ……可処分所得から消費支出をマイナスし、それを可処分所得で割ったもの。経済関係の文献では家計貯蓄率、あるいは貯蓄率として、「黒字率」のうち、特に勤労者世帯の「黒字率」を指している事が多い。

今回は単純に、世帯単位での家計貯蓄率を出すため、「黒字率」で家計貯蓄率を算出してみることにする。60歳以上の単身無職世帯では可処分所得が10万8477円、一方で消費支出は13万9469円。差し引きで家計貯蓄(黒字)は3万0992円になるから、家計貯蓄率は3万0992円÷10万8477円でマイナス28.6%になる。

↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率
↑ 高齢者世帯の家計貯蓄率

毎月貯蓄を上積み出来れば貯蓄率はプラスになるが、切り崩しているのだからマイナスになるのは当然。また、概算でも「年金とその他の収入を合わせて12万円ちょっと。税金などで1万2000円くらい削られるから(非消費支出)、可処分所得は10万8000円くらいしかない。でも消費支出が14万円近くあるのだから、3割近くを切り崩さねばならないよね」というのは分かるはず。この「3割近くを切り崩し」が「家計貯蓄率はマイナス28.6%」になる次第。



また別に機会を設けて再度解説をする予定だが、先日(なぜか昨年秋に発表されたデータが蒸し返される形で持ちだされて)話題になった、日本の貯蓄率の低下。あのOECDのデータはマクロ的なもので、先の一覧の上では内閣府の国民経済計算における「家計貯蓄率」が近い。この値は無職世帯や高齢者も含んだもので、当然今回取り上げたような、「無職の高齢世帯」も範ちゅうにはいる。

そして日本は高齢化が進み、全体に占める「貯蓄率マイナス」の世帯数は増加。さらに直近では雇用不安・消費支出の増加・低い利子率など、貯蓄を阻むような要素も数多く存在する。確かに景気後退などによる「お金に余裕が無い」事情による貯蓄性向の低下は否定できないが、それだけを要因としたものではないことをここに記しておく。実際、若年層から中堅層にかけては、どうにかやりくりして貯蓄を増やそうと努力している様子も数字に表れているのだから。

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