前年比マイナス32万人、派遣社員受難時代到来…非正規社員の現状をグラフ化してみる

2010/03/02 07:11

受難時代イメージ先に【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2009年版)】などでも取り上げたように、総務省は2010年2月22日、2009年における労働力調査(詳細集計)の速報結果を発表した(【労働力調査(詳細集計) 平成21年平均(速報)結果:発表ページ】)。そこには2009年、あるいは2009年を含む過去数年間における、日本の労働環境や雇用問題における各種データが盛り込まれている。今回はその資料から、非正規雇用関連の資料をいくつかグラフ化・グラフの再構築化をし、状況をかいま見ることにする。

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おおもとのデータは「労働力調査(詳細集計) 平成21年平均(速報)結果」の「グラフを用いた解説・全文」から。ちなみに「完全失業率」とは【辞めさせられたけど再就職をあきらめる人が増えている!? 統計局の「完全失業率の急上昇」をざっと読み通す】でも説明しているように、「完全失業者÷労働力人口×100(%)」。統計局の場合には「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人が「完全失業者」に認定される。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の推移。【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】でも触れているように、半ばノリ、半ば扇動された形で行われた「派遣叩き」によって、多業種の企業は派遣社員を敬遠するようになった。元々景気後退期ということもあるが、2009年において非正規社員のうち「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」はわずかながら増加しているのに対し、「労働者派遣事業所の派遣社員」は大きな減少を見せている。2008年時点で140万人だったのが108万人に減少。実に32万人も数を減らしているのが確認できる。

↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)

派遣社員の減少は単純比較ができる2003年以降では初めての事。他の形態も同様に数を減らしているのなら単に「労働力が供給過多」で済むのだが、「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」が増えていることを考えると、先の記事【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】での企業の意向が言葉だけでなく実践されていることが見て取れる。

派遣社員が大幅に減ったこともあり、雇用者全体における正規・非正規社員の比率は多少ながらも正社員側が増えることとなった。2009年時点では雇用者全体の66.3%が正社員(・正職員)、残りが非正規社員という計算になる。

↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)
↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)

このグラフ「だけ」を見ると単純に非正規社員の割合が増加しているだけに見えるが、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正社員数は横ばいか微減」「非正規社員は増大」という構図、言い換えれば「景気拡大期は非正規社員の増加で企業の業務拡大に対応していった」のが分かる。現在は景気後退期に入り、労働力過剰の影響が派遣社員、そして正社員に出ているわけだ。

失業者数の推移
会社の業務が手持無沙汰となり、労働力の需要が減り、特に派遣社員にその影響が出ていることはこれまでのグラフでお分かりの通り。ちなみに正社員・従業員は2008年の3399万人から2009年には3380万人となり、都合19万人減少している。増減という点では契約社員に次いで減少幅が大きい。

雇用者数の減少はそのまま失業者数の増加にも反映されている。

↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)
↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)

特に元正社員の失業者の増加数は22万人となり、これは2002年来最大の増加幅となっている。一方、元派遣社員の完全失業者は増加幅こそ13万人と元正社員には及ばないものの、前年比の伸び率という点では前年比で2倍を超え、派遣社員内はもちろん比較した全雇用形態中最大の値を示している。

特に元派遣社員の増加率が異常な伸びであるのが分かるのが次のグラフ。各雇用形態別にその時点で雇用されている人数に対する、前職でその雇用形態に居た人の完全失業者数の割合を示しているが、元派遣社員の完全失業者数が2割を超え、異常値を示している。簡単に例えれば、10人派遣社員が雇われている場合、それとは別に2.2人が元派遣社員の完全失業者として存在するという計算だ。

↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)
↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)

無論、パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(派遣社員は上記グラフにあるように108万人、パート・アルバイトは1153万人、正社員は3380万人となっている)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じていることは否定できない。しかしそれを差し引いてもなお、解雇された派遣社員の割合がいかに多かったかが改めて認識できよう。



繰り返しになるが、完全失業者数の増加幅・絶対数共に、元正社員の立場にある人が一番多い。しかし増加率、同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率では、元派遣社員の値が一番大きくなる。絶対値、割合、どちらをより重視するかの判断は個々の状況によりけりで一概には断言できないものの、同じ雇用形態で再び就職を望む人が多いことを考えれば、パイそのものが急速に縮小している元派遣社員の方が辛い感がある。

現在のような景気後退期において、労働力の調整弁的な立場にある派遣社員の人たちが多く失職するのは仕方がない、とする意見もある。しかし仮にその意見が正しいとしても、すでに正社員にまで大ナタが振られている現状では、調整弁云々の役割はすでに果たされたと見てよい。一部世論で執拗な派遣叩きが今後も続くのなら、さらに「本来失職する必要の無かった人たち」まで職を失いかねないのだが(あるいはすでにその状況下なのかもしれない)、どうだろうか。

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