宣伝に役立つか、それとも食われるか…音楽CD・配信とYouTubeとの微妙な関係を探る(2010年発表)

2010/03/01 07:01

日本レコード協会が2010年2月25日に発表した、2009年度の「音楽メディアユーザー実態調査」の報告書には最新の音楽メディア事情が、調査データを元にさまざまな視点から紹介・分析されている。今回はその中から、動画共有サイト【YouTube】に関する項目をいくつか取り上げ、YouTubeが音楽CDや音楽配信とどのような関係にあるのか、その一端を見ることにする(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は2009年9月2日から7日にかけて12-69歳の男女に対してインターネット経由で行ったもので、有効回答数は5024人。男女比は1対1、日本を5つの地域に区分した上での地域別・年齢階層別はほぼ均等割り当て(中学生がやや少なめ、高校生、大学生・専門学校生がやや多め)。

まずはネガティブな話から。音楽の無料聴取者のうち、この半年で新たに知った曲を聴いた人932人に対し、なぜその曲の「CD」なり「着うた」なりを購入しなかったのかを尋ねたところ、もっとも多い回答は「金銭的な余裕がなかった」で33.4%に達していた。そしてそれとほぼ同数で第二位の理由についたのは「YouTubeなどで好きな時に無料で視聴できるから」。33.1%がこれを理由に挙げている。

↑ 新たに知った曲を、購入しなかった理由は何ですか(無料聴取者のうち、この半年で新たに知った曲を聴いた人)
↑ 新たに知った曲を、購入しなかった理由は何ですか(無料聴取者のうち、この半年で新たに知った曲を聴いた人)

買わなかった理由としては「お金」「時間」が大きな要素となる。トップの理由はお金だけだが、第二位のYouTube絡みの「購入しなくても好きな時に(YouTubeなどを使って)視聴できるから」は双方の問題をクリアできる。CDを買わない人にとってその理由がYouTubeだけにある、というわけではないが、大きな要因となっていることに違いは無い。

しかし一方で、その要素がCDや音楽配信にはプラスに働く面もある。これがポジティブな話。CDや着うたなどのネット配信の音楽を知るきっかけとなった、いわゆる「気づき」を与えてくれた媒体として、YouTubeは第九位についている。13.0%という値はアーティスト自身のブログよりも高く、FMラジオとほぼ同率。

↑ この半年間(3月-8月)で、新品のCD、着うたフルやインターネット有料音楽配信サービスで配信される音楽ファイルを購入した際に、その発売を知ったきっかけとなった物・事は何でしたか(購入者限定、上位10%超えのみ)
↑ この半年間(3月-8月)で、新品のCD、着うたフルやインターネット有料音楽配信サービスで配信される音楽ファイルを購入した際に、その発売を知ったきっかけとなった物・事は何でしたか(購入者限定、上位10%超えのみ)

最近ではプロモーション用の映像を動画化して、公式チャンネル経由で配信し、多くの人に曲の発売を告知すると共に、CDなどへの購入誘因を行う事例が見られる。直近では先日公開された映画『涼宮ハルヒの消失』テーマソング「優しい忘却」(茅原実里/ランティス)の”公式”PVが記憶に新しい。


↑ 先日公開された映画『涼宮ハルヒの消失』テーマソング「優しい忘却」(茅原実里・ランティス)の公式PV。

メディアが近しいという点では、YouTubeは新品のCDよりは着うたフルとの方が相性が良いようだ。前者は9.5%、後者は13.5%が、YouTubeがきっかけになったと回答されている。

↑ この半年間(3月-8月)に購入した新品のCDについて、購入したきっかけとなった物・事は何でしたか。(CD購入者限定、上位10位まで)
↑ この半年間(3月-8月)に購入した新品のCDについて、購入したきっかけとなった物・事は何でしたか。(CD購入者限定、上位10位まで)

↑ この半年間(3月-8月)に購入した着うたフルについて、購入したきっかけとなった物・事は何でしたか(購入者限定、10%超えのみ)
↑ この半年間(3月-8月)に購入した着うたフルについて、購入したきっかけとなった物・事は何でしたか(購入者限定、10%超えのみ)

商品を販売する際には、消費者に「気づいてもらう」ことが何より大切。いくら良い商品であっても、その存在を知られなければ、買われることはありえないからだ。その点で、YouTubeは費用対効果の高いメディアの一つとして挙げられよう。



不当にアップロードされたものであれば、商品販売の妨げになることは否めないが、上手にコントロールすることで安価に、しかも効率の良いセールスプロモーション効果を期待できる。音楽業界にとってYouTubeは諸刃の剣のような立ち位置にあるといえる。

美味く活用するか、拒絶するかは各メーカー・ブランドの方針次第。ただ、もし活用するにしても、単純に曲の一部を流すような芸の無い事をするのではなく、例えば上の「優しい忘却」のように様々な関連商品・サービスの情報を盛り込んだり、コメント機能や外部タグ機能を解放してソーシャル系メディアの利点を活かすなど、「ひと工夫」をしてほしいものだ。

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