Vジャンプの伸びは限定カードが誘引か、PASH!なども堅調…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2009年10月-12月)

2010/02/22 07:18

【社団法人日本雑誌協会】は2010年2月16日、2009年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各紙が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値である。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたものであり、雑誌社側の公称(自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2009年の10-12月期と2009年7-9月期における印刷実績を見てみることにする。

2009年の10-12月期と2009年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
2009年の10-12月期と2009年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回も前回に続き、対象誌について変更があった。「Hobby JAPAN」だが発売が継続しているのは確認できたものの、データが非公開となってしまった。残念なお話ではある。

状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は6四半期(1年半)継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」というところだろう。特に「Vジャンプ」は本家のジャンプが【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2009年10月-12月データ)】でもお伝えしているように、少年向けコミック誌ではばく進しているのと似たような状態。ジャンプ二冠王体制、というところか。

また、いわゆる「季節特性」(前回が夏休みをフルに対象期間としており、「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減った(=販売数が減る)ことの反動)はほとんど見られず、むしろ部数を減らしているものが多い。一方で「Vジャンプ」が異様な伸び方を見せているのが確認できる。確認した限りでは「読者限定カード」「応募者全員サービスのカード」など付録が強力なインパクトを与えたようだ。複数部を購入する人も少なくないようで、それが部数アップに貢献したものと思われる。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。しかしながらホビー系の雑誌は多かれ少なかれそれを宿命としており、その「イレギュラー性」を乗り越え、販売冊数を重ねていかねばならない。たとえばゲームソフト自身に大ヒット作が出なかったとしても「ゲーム専門誌も売れませんでした」では経営陣も首を縦にはふるはずも無い(「株価が低迷しているから証券関連の専門誌が売れませんでした」という言い訳が通らないのと同じ)。

突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%台とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが4誌、ポジティブが3誌となる。前期と比べると、多少状況は悪化したようにも見える。ただし「ニュータイプ THE LIVE」は前期でプラス21.7%という大きな伸びを見せており、その反動と考えればあまり心配は要らない。「ファミ通DS+Wii」(前期はプラス16.3%)、「メガミマガジン」(前期はプラス15.7%)も同様。

Vジャンはカード付録が効果絶大。
「Vジャンプ」は直上で触れたように、付録のカードが大きなプラス要因となった。「一休みして次期は再び躍進を見せてほしいところ」と前回コメントした「アスキー・ドット・ピーシー」はマイナス3.9%。もう少し休憩が必要か。一方、同じアスキー名を関する「アスキードットテクノロジーズ」(「ユニックス・マガジン」と「ネットワークマガジン」が2009年4月に統合した新冊子)だが、前期の1万0884部から9500部に低下。冊数そのものは1000部強の減少でしかないが、全体に占める割合は決して小さくない。幸先が悪いスタートとなってしまった、のだろうか?

さて、前回の記事でも触れたように、定点観測を続けたおかげで、都合一年分以上のデータが蓄積できた。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を確認できる。なお当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、1年分の過去データが蓄積されていない雑誌はこのグラフには登場しない。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)

パソコン系雑誌では中々に頑張っている「アスキー・ドット・ピーシー」や、独占企画・他メディアとの連動企画・付録の展開で独自性を次々に打ち出している「Vジャンプ」、そして女性向けのアニメ雑誌という、斬新な視点で展開する「PASH!」などがプラスを維持。この雑誌不況の中、大したものだ。一方で「ファミ通DS+Wii」は5割近い落ち込みを見せており(約14.2万部から約7.2万部へ)、かなり気になるところ。



男性・少年向けコミックの前年同期比データと比べれば「前年同期比でプラス」の雑誌数が多い点ではまだ見るべきところがあるが、マイナス値を示している雑誌のマイナス度が大きく、目も当てられない状態。前年同期比でマイナス20%超えの雑誌が3誌もあるのは、少々以上の不安を感じざるを得ない。一方で上位、前期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きを見せる雑誌には「他誌には無い、自分のところだけのオリジナリティ・コンテンツ(記事しかり、付録しかり、対象となる商品しかり)」が際立つ傾向があり、それが読者に受けて印刷数(販売数)を伸ばしているように見える。

不景気で可処分所得が減少し、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に読者候補者の時間を奪われ、雑誌に対する興味関心も薄れる昨今。お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、「ひと山何百円」に見える同じようなもの、では無く「他には無い、うちだけの特別販売品」に見える個性的なもの(いわば「アクの強さ」)を創り出す必要がある。

もちろん適度な「アク」で無ければ、かえって読者を減らしてしまう点には注意しなければならない。そのさじ加減について、プラスを見せている雑誌たちは成功しているのではないだろうか。


■関連記事:
【ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2009年7月-9月データ)】
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】

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