【更新】吉野家の軟調さの気配が確認できる…精査連載記事第一回目・牛丼御三家売上:2010年1月分

2010/02/21 07:15

先に【吉野家、「牛なべ定食」を2月22日から期間限定で販売】で[吉野家ホールディングス(9861)]子会社の牛丼チェーン店「吉野家」が「牛なべ定食」を発売する事を報じた時に「さまざまなキャンペーンを打ち出してはいるものの成果が実らず、前年同月比で売上・客数で2ケタ台%のマイナスを相次いで記録しており」と言及した。改めて考え直してみると、吉野家をはじめとする牛丼チェーン店は「不景気下でも和風ファストフードとしてそれなりに人気を博しているはずだが……?」という疑問が沸いてきた。そこでいわゆる「牛丼御三家」の吉野家、[松屋フーズ(9887)]が運営する牛飯・カレー・定食店「松屋」、そして[ゼンショー(7550)]が展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」における営業成績を調べ直し、グラフ化してみることにした。

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気になるのはいわゆる「サブプライムローンショック」に始まる金融(工学)危機以降の動きなので、2007年夏以降のデータがあればよい。それなりに堅調な動きだったはずの2006年の頭から直近データである2010年1月までの、御三家の月次データ(売上高・客数・客単価の前年同月比)をそれぞれ抽出し、グラフ化する。幸いにも3社共似たような形式でデータを公開しており、比較的容易にまとめることができた。

まずは個々の営業成績について。なおこれらのデータはすべて「既存店」のもの。1年の間にグンと新店舗数を増やして、客数などをかさ上げすることはできないので、念のため。

吉野家は次の通り。

↑ 吉野家業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)
↑ 吉野家業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)

2007年夏までは起伏が激しかったものの、特に2006年以降は堅調に推移していた。ところが2007年以降急激に客数・売上高共に減少を見せ、マイナス圏とプラスマイナスゼロを行き来。2009年以降は漸減の動きを見せている。客足が遠のき、結果として売上も落ちている形だ。

減少のきっかけとなった2007年10月だが「不景気で客足が遠のいた?」のならば簡単に説明はつくのだが、実は他の二社には同様の傾向が見られない。このタイミングで原因として考えられるのは、同社が持ち株会社に移行したことくらい。体制の変更で客足がここまで遠のくのはあまり考えにくい事ではあるが……。

次は松屋。

↑ 松屋業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)
↑ 松屋業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)

牛丼だけでなくカレーなど多彩なメニューを取りそろえていることから、客単価の変動がやや大きめ。客数については2007年夏に落ち込みを見せたものの、その後じわじわと回復(とはいえ前年同月比ではマイナスだが)基調にあり、単価のかさ上げもあわせ売り上げをトントンに維持していたのが分かる。

しかしリーマンショック以降は客単価も落ち込み始め、あるいは方針を「客単価を下げてでも客数を増やすべき」に変えたのか、客数は増加するものの客単価が急に落ち込み、結果として売上も漸減してしまっている。

なお直近で2009年11月以降に客数が急に増え、客単価はそれに反する形で落ちているが、これは[牛丼の値下げキャンペーン(PDF)]によるもの。客単価の減少分以上に客数が増え、売上が増加しており、キャンペーンとしては(短期的には)成功した形。

最後にすき家。

↑ すき家業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)
↑ すき家業績推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)

客単価の変動傾向は多彩なメニューを持つ松屋と似たような感じ。ただし松屋と比べて客の入りは良く、結果として売上も堅調さを見せている。少なくとも2007年夏の「サブプライムローンショック」の影響も無いように見える。ただしさすがにリーマンショック以降の2008年秋を過ぎると、客の購入意欲の減退や市場のニーズに伴う値下げにより、客単価は減少。さらに客数も100%を切るようになり、売上も低迷を始めている。

なお松屋同様に直近で2009年12月に大きく客数が跳ね、客単価が落ちているが、原因も同様に主力商品の[牛丼値下げキャンペーン(PDF)]によるものと思われる。

御三家の売上・客数を見比べると……
さて御三家の客数を併記してみると、意外なことが見えてくる。

↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)
↑ 牛丼御三家客数推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)

100%のラインの上か下かで考えると、2007年以降吉野家は客数においてやや軟調(注意してほしいのは不景気が始まる前からだったということ)、松屋はそれにも増して今回データを取得した2006年以降客足が遠のき気味だったことが分かる。すき家も吉野家に近い傾向だが、2007年以降も100%超えの月も多く見られ、それなりに奮闘している模様。また、松屋・すき家両社の直近における牛丼値下げキャンペーンが大きくプラスに働いているのも確認できる。また、客数の点で一番堅調なのはすき家に見える。

いずれにせよ、リーマンショック以降の吉野家における下落傾向をのぞけば、不景気で客足の遠のき方が加速したわけではないことが理解できよう。

客単価は急激に変化するわけではないので、売上高も客数にほぼ類する動きをみせている。

↑ 牛丼御三家売上高推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(前年同月比)(2006年1月-2010年1月)

リーマンショック以降全社が、緩やかな下降カーブを描いているのはご覧の通り。一方吉野家はそれ以前にも大きな下落が確認出来、客数の低迷とほぼ一致していることから、客の誘因に失敗しているのが分かる。各社別のグラフでも言及したが、松屋・すき家が「客単価を下げるような値下げの分、客入りを多くすることに成功し、売上を上げている・低迷を抑える」ことに成功しているのに対し、吉野家はその方策ですらうまくいかないように見える。特にリーマンショック以降、吉野家の下降ぶりは心配せずにはいられないほど。



値下げで客数が増えるのは、その値下げで費用対効果の点で「購入するに値する」と判断する人が増えるからに他ならない。例えば「500円なら高いけど、450円なら買ってもいいかな」というものだ。

しかしおおもとの商品の魅力が値下げ後の価格以下と判断されていれば、いくら値下げをしても客数が増えることはあまり無い。多くの人に「これは300円くらいの価値しかないよね」と思われている500円の商品が450円に値下げされても、やはり買う人は増えない。

吉野家の場合、商品価格の値下げよりも、商品をはじめとしたサービスの質の見直しを図った方がよいのかもしれない。ましてや2008年以降はメイン商品たる牛丼が復活しているにも関わらず客足が戻らないのは、何か根本的に手を加えるべきものがあるのではないだろうか。

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