アメリカ国債(米国債)の引き受け先をグラフ化してみる(2010年2月掲載・2009年12月分データ反映版)

2010/02/17 17:00

米国債イメージ先日[時事通信]などで、アメリカ合衆国発行の国債(アメリカ国債、以後米国債)の2009年12月末時点における各国別保有高が発表され、日本の保有額が7688億ドルとなり、中国の7554億ドルを抜いて1年4か月ぶりにトップについたことが報じられた。これに伴い当サイトにも「例の米国債グラフを更新してくれ」とのリクエストが何件か寄せられている。前回の掲載【アメリカ国債の引き受け先をグラフ化してみる(2009年6月掲載・4月分データ反映版)】から半年強経過したこともあり、良い機会なのでデータを更新することにした。

スポンサードリンク


念のために確認しておくと、「国債」とは(はじめから利率分を割り引いている場合もあるが)「この証書の期限に、書いてある利息分を追加して返すので、お金を貸してください」という国の借金証明書のことを指す。英語ではTreasury securities(国庫証券)と表現する。

アメリカ政府財務省発行の国債こと「米国債」の引き受け先データはどこで手に入るのか。これは【アメリカ合衆国の国庫部門専用ページ】から入手可能。具体的には【過去のデータはこちら】【直近データはこちら】となる。直近のデータは後ほど細部が修正される場合もあるので、注意を要する。今回もいくつかの国で細かい修正が確認されたので、その再入力には随分と手間がかかった。

該当ページには各国の保有額(新規発行額では無い)が米ドル単位で算出され、海外政府引受分について(以下同)主要国分のデータが掲載されている。そのうち日本をはじめ、主要国上位6か国(エリア)を抽出してグラフ化したのがこちら。2000年3月から最新データの2009年12月分までが対象。毎年期間切り替えの時期があるので、その部分は差が生じないように調整をしてある(要は概要が分かればよい)。

金融(工学)危機が「現状では」ピークを迎えたとされる2008年10月以降(つまりリーマンショックが底だとする考え方)のデータを見ると、表立った危機度は後退しているものの、「延焼防止」「隠れた火種の鎮火」のため、全体額がさらにずいぶんと増加しているのが確認できる。逆に言えば発行された米国債が、危機を押さえつける財源に回されているともいえる。

米国債の引き受け先(全体額含む)
米国債の引き受け先(全体額含む)

前回同様に米国債の増加が著しい状況にあるのが分かる。実質値にして、この半年で2300億ドル(約21兆円)ほど総額が増えており、半年前のグラフ形成時からややピッチは衰えたものの、上昇カーブを描いていることに違いは無い。また、ドルを基準にした絶対額で見ると、後述するように日本と中国の逆転現象が(わずかではあるが)起きていることや、イギリスの保有量が増加していること以外は、大まかな各国間の相対関係・状況に変化は無い。

なお※1の石油産出国は中東諸国以外ベネズエラ、インドネシアなども含む。また※2のカリブ諸国の銀行とは俗に言う「タックス・ヘイブン」なところ。実際の金主は不明、というわけだ。

この傾向は、全体額を除いたグラフで見るとさらに明らかになる。

米国債の引き受け先(主要国のみ)
米国債の引き受け先(主要国のみ)

いずれもドルベースであることを前提として、ではあるが、柔軟な運用をしていたイギリスが、この半年の間に買い向かいを見せていることが確認できる。またブラジルは地道に、そして2006年中盤以降猛烈な勢いで買い集め、去年前半でやや保有量を減らしたがまた元に戻し、絶頂期に近い量までに戻していることも把握できる。そしてそれ以上に中国が2002年中盤以降大規模な購入をしていることや、日本の保有額が少しずつだが減少していたことが確認できる。

さらに1年ほど前に中国の買い増しスピードが加速をつけ、保有額が日本を超え一時期大きな話題になったあたりで、日本も保有額を減少から増加へと転じているのが分かる。ただこの時期はブラジルを除けば主要各国が保有額を増やしており、何も日本と中国だけの問題では無いのも確かではある。

これらの動向をもう少し詳しく見るために、期間を2006年1月以降に限定したグラフが次の図。

米国債の引き受け先(主要国のみ、2006年1月-)
米国債の引き受け先(主要国のみ、2006年1月-)

主要国の動向を額面上からまとめると次の通り。

・日本……漸減から漸増へ。
・イギリス……起伏が激しいが、全体的には横ばい。毎年夏に大きく保有額を増やした後、一気に減らすパターンを繰り返していたが今年はそれが無く、漸増を続けている。
・中国……増加。2008年後半から急増、ただし2009年以降は上昇率がゆるやかに。2009年後期は漸減状態に。
・カリブ諸国の銀行……2008年9月以降急増。ここ数か月は漸減から漸増へ。
・ブラジル……2008年半ばを境に漸減へ。しかしこの半年の間に漸増パターンへ移行。

日本は運用資産のポートフォリオの組み換えをしている最中ということもあり、米国債の保有「額」が漸減していたが、この1年の間に再び増加傾向を見せている。引受依頼があったからか、中国との立ち位置が逆転され外交上の問題が発生したからか、他国債とのリスクを勘案した結果なのか、はたまた他の理由によるものか(後述するように円高要素も無視できない)、このグラフからだけでは判断できない。ただ、前回の記事でも指摘したように、日本は「発行総額に対する比率」で購入額を決めているフシが見られ、この観点で見ればほぼ一定割合を維持している。

一方、中国は2009年5月の8015億ドルをピークに、その後横ばい、さらには漸減傾向を見せている。これが一過性のものなのか、それともポートフォリオの方針変更やその他の理由によるものなのかは不明だが、中国「本土」の保有総額が減少しているのは事実である。「発行総額に対する比率」を見ても法則の継続性を見出すことは難しい。

米国債の引受総額(2007年1月-、前月比、単位:10億ドル)(日本・中国・総額のみ)
米国債の引受総額(2007年1月-、前月比、単位:10億ドル)(日本・中国・総額のみ)

ただし直近3年の範囲でも、上記の図のように前月比で保有総額がマイナスとなった月は数多く見受けられ、為替の変動によるお得感や利回り、その他の事情も考えれば特段騒ぎ立てることも無いものと思われる。もっとも2009年12月の中国の減少額は(絶対額で見れば)やや大きいような感もあるが……。

それでは各国の引き受け額が発行額全体に占める割合はどのくらいで、どのような変化を示しているのか。それぞれの比率の比較と、全体軸に配したグラフの双方で表してみる。

米国債の引き受け先(全体軸に配したグラフ)
米国債の引き受け先(全体軸に配したグラフ)

米国債の引き受け先(棒グラフ)
米国債の引き受け先(折れ線グラフ)

「米国債の引き受け先(全体軸に配したグラフ)」は6国区分以外のもの(「その他」)を黄色で着色し掲載している。

オイルマネーと呼ばれる石油産出国は「額面上は」買い増しを続けているものの、全体的な比率としては一定枠を維持しているのが分かる。あるいは意図的に、比率を維持しつつ額を上下しているのかもしれない。また先に記したように日本は20%を意識するような動きを見せている。保有総額が増加しているのは発行総額が増加したからであって、2008年後半以降はポートフォリオ的に「発行総額の20%強」というスタイルを維持しているように見える。

日本と似たような現象はイギリスにも見られる。保有額的には直近の最大値を超えているものの、発行総額に対する比率は10%に満たず、過去の定期ルーチン的動きの最大値と比べれば、まだ低水準(≒さらに買い増しが行われる可能性)なのが確認できる。



少なくともこのグラフを見る限り、「国債を持っている(借金証書が手持ちにある)」という意味では、アメリカに対する中国の意見力は増加中である、と考えて間違いない。ただし去年の夏から保有総額は増加傾向を止め、12月に至っては減少を見せている。繰り返しになるが、これがいかなる理由によるものかは今データからだけでは分からない。中国政府当局も特段ステートメントを出していないので、推測も難しい。

また、日本の保有総額の上昇だが、一つに本文中で触れているように「発行総額に対する比率でポートフォリオを組んでいるがための増加」である可能性は否定できない。恐らくはこちらが正解だろう(2000年初頭から2003年あたりまで同様の傾向が見られる)。それと共に円高の進行も要因の一つとして考えられる。この1年に対米ドル相場は95円台から90円台へ5円も円高が進んでおり、「日本円で」米国債購入の予算を組んだ場合、その分多くの(ドルベースでの)額の米国債が買えることになるからだ。もっともこの場合、満期に達した米国債の償還分をそのまま再購入に充てていたとしたら、「円高云々」は説明にならないことになる。

さらに、今回データを抽出している上で気が付いたことを一つ、最後に挙げておく。これまで保有額では10位台あたりにいた香港が、急激に保有額を増加している。直近一年で約2倍。順位はブラジルに続いて第七位にまで上昇している。

米国債引受総額推移(2008年12月-)(日本・中国本土・香港)(10億ドル)
米国債引受総額推移(2008年12月-)(日本・中国本土・香港)(10億ドル)

先に本文中で中国「本土」という表記をしたのも、実はこれが原因。香港は一国二制度(香港行政区基本法)下においての民主化および政党政治が行われ、現時点では2047年まで資本主義のシステムをとり続けることになっている。とはいえ(表現は悪いが植民地的・従属領域な)中国の領域に違いはなく、独立性・完全な自治権もない。

あるいは中国は香港の持ち分も合わせて、米国債の保有総額を調整しようと考えているのではないだろうか。またはさらに香港の持ち分を増加させるような、何か別の理由があるのかもしれない。今後は日本、中国はもちろん、香港の米国債保有額にも注目していかねばならないだろう。


■関連記事:
【日米の家計資産推移をグラフ化してみる(2009年3Q分)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー