百貨店やスーパーの分野別売上高推移をグラフ化してみる(2010年2月版)

2010/02/01 06:55

デパートイメージ以前【百貨店やスーパーの分野別売上高推移をグラフ化してみる】で経済産業省のデータを元に、チェーンストア(スーパー・デパート)の分野別売上高に関するグラフを生成した。それから半年ほど経過し、2009年12月分の速報値も出たこともあり、最新データを反映したバージョンを創ってみることにした。チェーンストアの統廃合は継続中で、同業界の景気は一向によくなりそうにもない。売上高の面でそのような状況が、どんな風に映し出されているのかが分かるはずだ。

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【経済産業省の商業動態統計調査】【統計表一覧】に掲載されているデータは、百貨店・スーパーのもの。当サイトで業界団体発表の売上高を定期更新している「チェーンストア」とは、「百貨店」か「デパート」の違いがあるが、表記上の違いでしかないと見なしてよい(【百貨店 衣料品客離れていく 行き着く先はモールとネットに】で説明しているように「日本チェーンストア協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者がデパート、日本百貨店協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者が百貨店」という程度)ので、同一視して問題ない。

月次報告では「衣料品、住関品は売上が大変落ち込んでいる」「食料品はそこそこ堅調だったが最近は前年同月比でマイナスに」という報告を繰り返している。それではその傾向はいつ頃から生じていたのだろうか。まずはデータが用意されている1988年以降の推移について、年ベースでグラフ化したのが次の図。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)

グラフのタイトルにもあるように、実は現時点では2009年12月の値が速報値なので、2009年分の年次確定値は公開されていない。そこで12月分は速報値のまま1-12月分までを足して2009年の年間売り上げを算出。その上で2008年分と比較して前年比を導いた。確定値が出てから算出すれば多少の差異は生じるかもしれないが、大局を見定めるにはこれで十分の精度といえる(次回機会があれば、改めて入力し直すことにしよう)。

元データの項目区分の都合上、衣料品・食料品はともかく、住関品は他のものと一緒になってしまっている。しかし比率的には住関品が圧倒的に多数を占めるので、変移を見る上ではさほど影響がないと見てよい。

さてグラフを見ると、

・1990-1991年までがピークで、あとは下降、前年比マイナスを継続している。
・飲食料品は他分野と比べれば大きな変動がない。
・住関品や衣料品は1992年-1993年の低迷時期を皮切りに、約5年のサイクルで大幅な減少を見せている。
・衣料品は特に下げ幅が大きい。
・衣料品、食堂・喫茶の2009年の下げ幅はこれまでのパターンを逸脱するほどのもの。
・2009年は全分野でマイナス。

など、実は昨今のチェーンストアの低迷が昨日今日に始まったことではなく、1990年前半以降継続した問題であることが分かる。これは以前【小売業の売上推移をグラフ化してみる】で指摘した通り。特に住関品・衣料品は1990年代後半以降、2004-2005年の好景気をのぞけば前年比でマイナス3-6%の範囲で低迷したままで、両分野が深刻な状況にあったことが見て取れる。

それに加えて2009年においては、売上でかなりの部分を占めている飲食料品もマイナス。その上衣料品ではこれまでに無かった規模の下げ(マイナス9.7%)が確認できる。リーマンショック云々による直接の下げは2008年に起きているから、むしろ2009年はそれをきっかけに構造的な問題が加速度的に露呈していったものと想像される。

また、注目したいのは食堂・喫茶。単価が低く、他の分野よりも直接客足に影響されやすい分野だが、こちらも衣料品同様のきつい下げが生じている。理由の一つは消費者の消費性向の変化(外食離れ)があるが、それと同時に客数が大幅に減少している可能性を示唆しているといえる。

続いて先の記事同様に、2009年12月は速報ベース、それ以前は確定ベースのデータを元に、月次の推移をグラフ化する。スタートは2007年4月。昨今の金融(工学)危機による景気後退が影響を見せ始めた2007年夏の直前から。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)

1990年後半以降の定期的な低迷なら、前年同月比で悪くともマイナス6%前後に留まってい。しかし2008年の後半以降、とりわけ同年秋以降下げ幅が底割れするがごとく下落している様子が分かる。月次ベースで逆算しても、2ケタ台の前年同月比マイナスはほとんど(全分野でチェックしても1997年に一度だけ記録があるだけ)なかった出来事なのに、2008年秋口以降「マイナス8%・9%は当たり前、2ケタ割れもあるヨ」的状態なのが確認できるはず。

これらの傾向はいわずもがな、2008年9月の「リーマン・ショック」をきっかけにした景気の大規模な後退、さらにデフレ感が大きく影響している。元々景気後退感の香りがただよっていたところに、リーマン・ショックがくさや級の香りで襲来したというところか。

なお2009年12月分(一番右、直近)が急上昇しているように見えるが、これはいわゆる「1年越しのトリック」によるもの。2008年12月が大幅に減少しているので、それから1年経過した2009年12月は「前年同月比で」状況が改善しているように見えるだけの話。売上そのものは減少を続けている事実に違いは無いことを留意しておく必要がある。例えば2009年12月の全体売上額は206億9300万円。2008年12月は215億9000万円となる。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2008年12月と2009年12月の比較、2009年12月は速報値)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2008年12月と2009年12月の比較、2009年12月は速報値



これらのデータを見るに、昨今におけるチェーンストアの低迷振りは「1990年代以降露呈していた構造的な問題による売上低迷」に加え「昨今の景気後退による加速化」という、二つの要素によるものであることが分かる。2007年以降の景気後退がチェーンストアの業績悪化の主要因では無く、あくまでも後押しした・加速化させただけに過ぎない。例え2007年以降も好景気が続いていたとしても、現状のような状態は遠からず発生したものと思われる。

人口の減少や可処分所得の漸減なども、売上減少の理由として考えられよう。しかしそれでは、GDPが増加した時期や好景気の時に、売り上げが伸びないことへの説明がつかない。むしろ今件のチェーンストアにおいては「コンビニやディスカウントストアなどの登場」「インターネット通販の普及」「家族構成の変化」「消費者の消費性向の移り変わり」など、刻々と変わりゆく周辺環境の変化に対応し切れなかったこと(1990年前半にはすでにその傾向が見えていたにも関わらず、だ)に、昨今の売上低迷の起因があるのではないだろうか。

ここでピン、と来る人もいるだろう。この構造、実は(前回の記事でも指摘したように)【過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる】で解説した、大手既存メディアの広告費の移り変わりと非常に似通っているのだ。低迷著しい両業界とも、流通や通信網をはじめとした社会構造が今世紀に入ってから大きく変化しているにも関わらず、その流れに対応していない、追いついていないゆえの結果と思われる。

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