2009年12月分の景気動向指数は3か月ぶりの上昇、先行きも3か月ぶりの上昇

2010/01/13 12:10

内閣府は2010年1月12日、2009年12月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は3か月ぶりに上昇した。先行き指数も3か月ぶりの上昇傾向を見せている。基調判断は厳しく、日本語としては先月同様厳しい表現である「景気は、下げ止まっていたものの、引き続き弱い動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「変わらない」「ややよくなっている」が微増
「景気ウォッチャー調査」とは毎月月末に調査を行ない翌月発表される、地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するためのもの。北海道、東北、北関東、南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の11地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映しうる業種などから選定した2050人を対象としている。

また、調査結果中用いられているDIとはdiffusion index・景気動向指数のことで、3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目で、全員が「回復」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%に近づく。

2009年12月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.5ポイントの35.4。
 →3か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」「変わらない」が微増、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が微減。
 →家計においてはエコポイント付与による薄型テレビなどの家電販売が増加し、上昇。企業は受注や売上が極めて低調で資金繰り悪化の企業があることから低下。雇用は企業側態度が慎重なことからほぼ横ばい。
・先行き判断DIは先月比プラス1.8ポイントの36.3。
 →3か月ぶりのプラス。
 →家計ではエコポイントの継続や環境対策自動車の購入にかかわる減税・補助金制度の継続への期待でプラス。企業では円高懸念のやや後退、雇用では一部で求人の動きがあることから上昇。
前政権からの政策継続によるマインドの微増が主な要因となっている。

景気マインドは急降下
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

先月比プラスのものを赤色で囲ってみたが、家計分野で多くの項目がプラスを見せている。ただしその数字は決して強いものでは無く、先月の大幅下落分を取り戻すまでは遥かに遠い。また、企業・雇用分野では実質的に横ばい、むしろマイナスの状況にあるのが分かる。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いていた。今月は、先月見せた「ジェットコースターばりの下落」と比べればわずかであり、リバウンドに過ぎない感もあるが、ともあれ上昇しているのが分かる。

・今年に入り、
下落傾向から反転の傾向。
・「雇用と全体の下落逆転」が
確認される。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりはまだマシ。
・政策や円高などを起因とする
不安感から低迷状態継続か。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフから一目瞭然。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレすら許されなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。

今年に入ってからの動きは、2001年後半以降の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」であるのなら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では2か月前に見られた「直近における天井感からの下落」の傾向がひとまず停止し、やや落ち着きを見せたような雰囲気。さらに4か月前の時点で「交差」現象は確認済み。前回の傾向を踏襲するとすれば、これからしばらくは雇用情勢は直前と比べて多少の回復が見られるものの、全体的には景気がさらに悪化することになる。

景気の先行き判断DIについても、微量ではあるが増加した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

プラス項目数は多いが、上げ幅はまちまちでボリューム感はあまりない。心境を押し上げた要因が「円高が一段落ついたこと」や「前政権からの政策継続」という消極的な事象によるものだろうか。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、ただでさえ大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが分かる。

今月は全体的に小さくプラスを見せたが、具体的要件を確認する限りにおいては、リバウンドの域を出ていない(直接数字を押し上げる積極的要因が見つからない)。企業動向関連値の上昇幅を見ても、先月の1/2-1/4程度の上げ幅で、今一つ勢いに欠ける。

そして2か月前にも触れているが、「現状」同様に景気の上昇・安定時における「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、そのシグナルとなるクロス・逆転現象が「先行き」でも確認できている。今月は2か月前のコメントで予測した通り、「現状」「先行き」共に、景気動向が次なるステップに進んだとほぼ断じてよい。つまり「低迷期の再来にようこそ」というわけだ。

今月の上昇で、先月大きな懸念となった「大規模な下げを起因とする景気の『底抜け』感」はかろうじて回避された雰囲気が見られる。とはいえ、諸外国と比べれば「周遅れ」的なところは否めない。

デフレ感強まる
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・今月中盤以降はテレビが売上のほとんどを占めるようになった。大型テレビが特によく売れており、まとめて購入する客も多い(家電量販店)。
・新型インフルエンザの影響で外出を控えていた人達が、12月に入り若干は戻ったものの、まだ前年割れが続いている。持ち帰り、通販など自宅消費型の商品が好調で「巣ごもり」傾向のあらわれである(一般レストラン)。
・今月中旬以降は気温も低下したが、婦人、紳士関連のジャンパーやジャケットよりも、機能性下着が好調に動いている。一方、クリスマスケーキやおせち料理の予約件数はほぼ前年並みであるが、単価が5%低下している(スーパー)。
・景気低迷の影響から、年末年始も客の巣ごもり傾向が強い。また、単価の高い年末年始を避けて、比較的単価の安い1月の3連休に客が流れているため、売上も増えていない。一方、インターネットを通じた販売は依然として堅調である(旅行代理店)。
・住宅建築のための借入審査が更に厳しくなったため、新築はより難しくなっている(住宅販売会社)。

■先行き
・環境対応車購入補助金の延長の効果がこれから更に現れてくる。半年伸びただけで、所有する車が13年を超える客がかなり増えるため、その結果、今まであきらめていた客の購入が増加する(乗用車販売店)。
・賃金の低下による高額品離れや、ファストファッションやアウトレット等の競合拡大が今後も想定され、数か月での回復は見込めない(百貨店)。
・12月としては例年よりも早い時期にセールを催している店舗が、多くなってきている。正規価格で買う客が全体的に減っており、単価が上昇しない印象がある。来客数の増加も見込めず、現状は変わらない(衣料品専門店)。
・売上額、来客数、購買単価、どれを見ても下降傾向にある(競輪場)。
・卒入学シーズンになるが、消費者はあまり金をかけられないため、ぜいたく品感覚の美容に対する支出はかなり減らされる(美容室)。
など、小売業全体にまん延している価格下落圧力、消費を極力抑え自己防衛に走る傾向の一つ「巣ごもり」現象などが多くの事例で確認できる。肯定要因といえばインターネット関連と、エコポイントや環境対策車周りの話くらい。

さらに詳細は元資料で確認してほしいのだが、【調査結果のPDFファイル】では、全国の「現状判断」の回答のうち3分野それぞれについて、5つの回答区分(◎良、○やや良、□不変、▲やや悪、×悪)の中で回答者数の多い上位3区分(雇用関連は上位2区分)の判断理由として特に着目した点について、直近3か月分の回答者数推移が掲載されている。ここでは「家計」と「企業」のものを掲載する。

↑ 現状判断の理由別(着目点別)回答者数の推移……家計動向関連
↑ 現状判断の理由別(着目点別)回答者数の推移……家計動向関連

↑ 現状判断の理由別(着目点別)回答者数の推移……企業動向関連
↑ 現状判断の理由別(着目点別)回答者数の推移……企業動向関連

12月も状況的にはさほど11月と変化がないことが分かる。この状態でよくプラスになったものだ。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、政治要因を起因とする
不安要素がまん延、拡散。
世界の景気回復感からは取り残され、
前回不況パターンと同じ、
さらに「前回パターンより悪化」の
可能性も。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているように、今回の景気悪化(と復調)が、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する様相を見せている。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと思われる。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中。

実証されつつあるこの仮説が正しければ、すでに最大の底値は脱しており、今後は比較的短期の再下落を経て、横ばい・回復基調が続く可能性は高い。実際すでに「現状」「先行き」ともに、本格的な上昇の事前現象である「全体指数を雇用関連指数がクロスして大きく上向く」の先駆けともいえる「クロス」現象が確認でき、今月もその状況が続いている。あとはこれが継続、下落傾向に至れば、パターン踏襲がより確実なものとなる。

気になるのは2か月前にも指摘した、直近の国内要素によるマイナス作用が予想以上に大きかったこと。11月は下げるであろう予想はしていたものの、その予想をはるかに上回る急速な下落ぶりとなった。今月12月分は先月のコメント「希望的観測としては、12月はややリバウンドを見せて持ち直し、あるいは下落幅が縮小する……と良いのだが」の通り、わずかながらリバウンドを見せ、一安心。しかしリバウンドはあくまでも自己反発でしかなく、その勢いが止まれば再び下落を見せるのも世の常というもの。来月以降も上昇を見せれば良いのだが。

複数の調査機関の調査結果からも、昨年夏以降は政局・政策・金融市場の観点で、控えめに表現しても「混乱を起因とした不安感の助長と、その結果もたらされる景気後退」にあることが数字となって表れている。一部上場企業の短信の中には、実名を挙げて名指しでその動向を非難するという、前代未聞の文言も見られるほどである。

海外の経済動向に注目するのはもちろんだが、それと同じくらい国内のさまざまな動きを見極め、既存の概念や過去の情報収集ツールが発する情報に振り回されることなく、「正しい情報」を元にした正しい判断のもと、景気の流れを慎重に見守り、そして行動する必要があるだろう。

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