外より家、遠出より近所……変わる若年層のライフスタイル

2010/01/12 05:32

のんびりな若者イメージ以前【「買いたい」想いは変わらない・大学生はなぜクルマ離れをしているの?】【「クルマなんかいらない!」大学生が思うその理由は!?】で、現在の若年層が以前と比べて自動車を購入しない傾向を持っていることについて、日本自動車工業会の「乗用車市場動向調査」の【2008年版(PDF)】の解説として「金銭的な将来像・先行きへの不安感が増大している」「お金に対して慎重な姿勢を見せている」からではないか、という話を紹介・解説した。今資料には自動車の購入そのもの以外にも、今の若者(具体的には大学生)と昔の若者(現在の20-30代・40-50代の大学生当時の心境)との行動様式の違いを知ることができる、多数のデータが盛り込まれている。資料的価値も高いため、今回はその中から「プライベートな時間の過ごし方に見る、内向的な傾向」の一端を解説してみることにする。

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今調査は2008年11月12日から14日にかけてインターネット経由で行われたもので、現大学生は18-24歳の大学・短大生(1000人)、以前の大学生は現在20-39歳の人が300人・現在40-59歳の人が300人。男女比は現行大学生が57対43、以前の大学生はいずれも1対1。

まず紹介されていたのは、大学生の余暇活動の内容の推移。これは同資料内調査結果ではなく、【レジャー白書】からの抜粋とのこと。

↑ 大学生の余暇活動の内容の推移(男女10代、20代の平均)(レジャー白書1998、2008より)
↑ 大学生の余暇活動の内容の推移(男女10代、20代の平均)(レジャー白書1998、2008より)

10年の間に、アウトドアでの活動性向が減り、インドアが増えていることが分かる。似たような設問を、切り口を変えて今調査母体で聞いたのが次の結果。具体的には「休日はどのように過ごすか」という問いで、「その日の気分によって適当に過ごす」「特に何もしないで時間を過ごす」という設定に該当するか否かを答えてもらったもの。両方ともインドア、内向的な項目だが、両者とも現大学生の方が回答率が高い結果となっている。

↑ 休日の過ごし方の世代変化
↑ 休日の過ごし方の世代変化

一つ前の世代、二つ前の世代でも、「休日をインドア系の行動で過ごすことが多い人」はそれなりに存在している。ただしその割合が、時間経過と共に増加する傾向を見せている。「その日の気分によって適当に過ごす」は二世代前は3人に1人だったのが、今や2人に1人という割合だ。

休日に外出するか否かという点でも、昨今の若年層の内向性が見て取れる。

↑ 休日の外出についての世代変化
↑ 休日の外出についての世代変化

「外出しない」派が現大学生では5割近く。3-4割だった「かつての」大学生と1-2割ほど、外出をひかえる傾向が見える。

仮に外出する事が多い人でも、その行動範囲は明らかに現大学生(現若年層)の方が狭い。自宅周辺で事を済ませてしまう、満足してしまう人が多い。

↑ 世代別、休日の外出範囲(休日に外出する事が多い人計ベース)
↑ 世代別、休日の外出範囲(休日に外出する事が多い人計ベース)

現大学生では過半数が「自宅周辺が多い」と答えている。かつての大学生世代の「繁華街」の割合と入れ替わった形である。

「ワンマイル族」は蔑称か否か
これらのデータを斜め読みすると、いわゆる「ワンマイル(1マイル)族」という言葉が頭に思い浮かぶ。これは【自動車も食生活も住宅も そこそこ満足 今の若者】【「自動車に興味も関心もナシ」若年層ほど増加傾向】などで解説しているが、若年層の間に浸透している「行動範囲が1マイル=1.6キロ内に集約され、遠出をせずに消費を抑えて生活しようという、省エネ的なライフスタイルを持つ人たち)的な生活様式」のことを指す。ただ、これが報じられる際は大抵において否定的、蔑称的な意味合いが強い。いわく「こんなライフスタイルだから覇気が無い」「消費をしない」「内向的だ」「消極的だ」など、特に団塊世代前後からの「お叱り」的な否定的意味合いが多数含まれている。

しかし果たして「かつての若年層」と生活様式が違う、違和感を覚えるという理由だけで「ワンマイル族」的な行動様式を頭ごなしに否定して良いのだろうか。

例えば今件最初のデータ「インドア・アウトドアの余暇活動の変移」なら、アウトドアよりインドアの方が面白いものが増えたからかもしれない。「休日の過ごし方」にしても目的意識云々という見方もできるが、同時に「精神的な余裕を持てるようになった」と解釈することもできる。「休日の外出」で外出しない人が増えたのも、楽しく過ごすために「外にいく必要性が減ったから」という可能性は十分にある。外出する人の遠出が少なくなったのも、環境の整備・小売店のサービス充実(コンビニなど多目的店舗の普及も一因だろう)、交友関係の変化(資料内別項目にあるが、自宅近所の人との友達が減り、他の手法による広範囲な交友関係が増加する傾向にある。核家族化で「近所同士の世帯単位の付き合い」が減ったのも一因と思われる)などが原因の部分も多分にある。

そして以前の記事でも触れたように、現在の若年層は特に経済面において(かつての若年層とは比べ物にならないほど)将来への不安を感じている。皮肉にもそれは、かつて若年層だった、そして今の若年層にもっと消費しろと「お叱り」をしている世代の責によるところが大きい。少なくとも若年層らの目にはそのように見えている。

現在の若年層のライフスタイルの変化、「ワンマイル族」的傾向は、

・社会構造、環境の変化によるもの
 (インターネットの普及、核家族化、サービス業の普及)
 →身近に、自宅で過ごせるものをわざわざ苦労して遠出、外出してこなす必要の薄さ

・経済的環境の変化、不安感の高まりによるもの
 (可処分所得の横ばい・低迷と、年金問題や「勝ち逃げ世代」に対する失望、将来に向けた「希望」が見えにくい)

などの要因がもたらした、当然の結果・変化(、進化とすら呼べよう)でしかない。言い換えれば「現状を冷静に見つめた若年層たちの、最善の対応策」といえる。前に【「買いたい」想いは変わらない・大学生はなぜクルマ離れをしているの?】でも触れた通り、昔と比べて将来の金銭的な不安が大きい現在において、昔と同じように多額のローンを組んで自動車を買え、などという意見は無理難題に等しいものがある。

例えるなら「お小遣いは昼飯代も含めて毎日必ず1000円、気分の良い時には奮発しちゃう」と親から言われている子供Aなら、毎日もらった1000円は使いきってしまうことも多いだろう。返すあてもあるのだから、大きな買い物を分割払いで買うこともいとわない。しかし「お小遣いは昼飯込みでとりあえず毎日1000円。でも家計が厳しいからお小遣いの無い日もあるかもしれないし、今後1000円から500円に減らすかもしれない」と言われた子供Bは、先の子供Aと同じような使い方をするだろうか。そして今の若年層が置かれている心理的環境は、まさに子供Bの立ち位置に他ならない。

若年層のライフスタイルは
マイナス的性向や忌むべきものではなく
社会・環境に応じた「進化」でしかない
周囲環境・社会構造が変化すれば、そこで暮らす人々もそれに対応して生活様式を変えていくもの。特に都市部における、自動車(保有)離れに代表される若年層の「変化」は、繰り返しになるが「進化」に近いものがある。それが単にそれより上の世代、特に自分の価値観からの変化を嫌い、柔軟性に乏しい傾向のある(これは多分にその世代自身たちが、それより前の世代(戦争体験世代)をひたすら否定して「け落とした」経験からによる。似たようなことを自分たちがされないかと恐れているからだ)団塊世代の目には恐れを含めた違和感のあるものとしてとらえられ、あるいは都合の悪いものと認識され、否定されているのが現状だろう。

賢い大人たちはそろそろこの現状に気が付き、「どうすれば現在の社会環境を冷静に見つめ、若年層と向き合い、共に歩んでいけるのか」を真剣に考え始め、動き出している。一方、その「気付き」を得ることができず、あるいは頑なに自分の変化を拒み、「自分たちが世の中を動かしている」と自負し、半ば否定的な意味合いを込めて「ワンマイル族」という言葉を否定的に用い、若年層らを笑っていた人たちが、いつの間にか時代の流れに取り残されていく風潮が見え始めている。そんな傾向がそこかしこで見え、社会全体の流れとなる時代が来るのも、そう遠くはないだろう。

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