書店の売上高・経常利益率をグラフ化してみる(2010年1月更新版)

2010/01/13 07:17

大型書店イメージ先に【書店の減り具合をグラフ化してみる(2010年1月更新版)】の冒頭で触れたように、アマゾンジャパンの『全品を対象にした送料無料キャンペーンが2010年3月31日まで』行われるのに伴い思い立った「書店関係のグラフの更新記事」の続編として、今回は書籍・文具業の財務的データを眺めてみることにする(前回の記事は【書店の経常利益率をグラフ化してみる】)。グラフを生成している過程で改めて気が付いたのだが、やはり財務の上でも書籍・文具業の辛さは増しているようである。

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元データは【日本著者販促センターの「書籍・文具業の売上高ランキング」】から。一応用語について説明しておくと、「売上高経常利益率」とは儲けの度合いを示す。

会計上の計算の上では、まず本業(書店の場合は本の販売)の売上から原価が引かれ、これが「売上総利益」になる。そしてそこから「販売費」や「一般管理費」(俗にいう「販管費」)が引かれ、本業による儲けである「営業利益」が計算される。そしてそこから本業以外の「営業外収益」と「営業外費用」が足し引きされ、「経常利益」が計算される。

・売上高-売上原価=売上総利益
・売上総利益-(販売費+一般管理費)=営業利益(本業の儲け)
・営業利益-(営業外収益-営業外費用)=経常利益(本業+副業の儲け)

そして、この「経常利益」を売上高で割って100分率で算出したのが「売上高経常利益率」。

「結局売上高経常利益率は何を意味するのか」という疑問があるだろう。この「売上高経常利益率」とは「その会社の本業と副業を合わせたお仕事の利益率」を意味する。例えばこの値が10%なら、1000円の商品を売ると100円の儲けが出ている計算になる(本当はもっと細かい計算があるのだがここでは省略)。

「1000円の商品を売って10円しか儲からない(売上高経常利益率が1%)」と「1000円の商品を売って100円儲かる(10%)」なら、後者の方が効率よいビジネスをしていることになる。売上高経常利益率が高い方が「賢い・割の良い商売」をしているわけだ。逆に言えば売上高経常利益率が低いほど、何らかのトラブルが生じた時に金銭的な対応が難しくなる。

さて肝心の「大手書店・文具店」の売上高経常利益率だが、最新データ(2009年度分)については次の通りとなる。今件グラフでは比較対象とすべき企業で赤字決算(つまり経常利益率がマイナス)となり参考にならないので、純粋に元データによるグラフとした。

まずは企業単位の売上高ランキング。こちらは掲載されている28社全社についてグラフ化した。

↑ 書籍・文具業売上高ランキング(1店舗あたり)(2009年度)(億円)
↑ 書籍・文具業売上高ランキング(1店舗あたり)(2009年度)(億円)

店舗数の違い、1店舗当たりの規模の方針の相違などもあり、単純比較はやや誤解を生む可能性がある。それでも「スケールメリットのあるなし」に重点を置いて見る材料として考えると、やはり知名度の高い紀伊国屋書店や丸善、有隣堂、ジュンク堂書店、ブックオフコーポレーションなどが上位についているのが分かる。

元資料には店舗数も併記されている。そこで売上高を店舗数で割り、「1店舗あたりの売上高」を算出したのが次のグラフ。平均的な1店舗あたりの売上高≒店舗規模の違いが分かる。

↑ 書籍・文具業売上高ランキング(1店舗あたり)(2009年度)(億円)
↑ 書籍・文具業売上高ランキング(1店舗あたり)(2009年度)(億円)

多少順位の違いはあるが、やはり全体的な売上高上位の企業が、1店舗あたりの売上高でも上位についている傾向が分かる。純粋な、あるいはそれに近い「書店」としては、規模の拡大に頼るのが「正攻法」としての生き延びる道なのだろう。

一方で、グラフの右端に「ブックオフ」と「ヴィレッジヴァンガードコーポレーション」がいるのが分かる。これはつまり、1店舗あたりの「売上高」が小さい事を意味する。両社とも売上高全体ではそれなりの順位にいるが、丸善などと比べれば後陣の位置にある。しかしこの2社、肝心の「売上高経常利益率」では上位2位を独占している。

↑ 売上高経常利益率(掲載データ中上位10位のみ、2009年度)
↑ 売上高経常利益率(掲載データ中上位10位のみ、2009年度)

第二位のブックオフは良く知られている古本屋のフランチャイズ。徹底されたシステム化と原価が安いこともあり、高い利益率を誇っている。それにも増して利益率の高さが目立つヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、単なる本屋ではなく、おもちゃやCD、雑貨など色々な商品を取り扱い、書籍そのもののボリュームは半分以下という運営形態。そしてPOSシステムが使われていない・特徴的なPOP戦略など、普通の本屋とは一線を画する経営方針を採用している。そのような、他の書籍・文具業社とは違う経営スタイルだからこそ、高い売上高経常利益率を挙げられたのだろう。



前回の記事、そして今件の本文中でも触れているが、純粋、あるいはメインが書籍・文具業の店舗においては「規模の極力な拡大(店舗数、1店舗当たりの売上)」で何とか経営を維持しているのに対し、「書籍・文具””取り扱う」企業は1店舗あたりの規模が小さくとも高い収益率を挙げている。

・純書籍販売店
→スケールメリットで
 難局打破を模索?
・書籍その他混合店
→高収益率を維持
元々書籍や文具の収益構造の根幹にある「規模が大きくないと儲けにくい」「他業種との兼業で無いと利益をあげにくい」という要素は前々から存在していたようだ。それがインターネット通販の普及や地域社会の構造変化で露呈しただけで、早かれ遅かれ同じ問題に突き当たっていた可能性は高い。

また、規模の拡大などで昨今の難局を乗り切ろうとしている書店も、昨年と比べるとその多くで収益率が減少しているのが分かる(その中でフタバ図書が数少ない上昇事例として、1.3%から1.6%に改善されたのが確認できる)。

ここしばらくは読者の可処分所得は横ばいか減少を続けるだろうし、雑誌そのものの「媒体力」も低下する傾向は否めない。さらにインターネット通販の利用率は増加を続ける一方。書籍や文具を販売物の一要素としてとらえているヴィレッジヴァンガードコーポレーションはともかくとして、その他の「書籍販売をメインとしている書店」は、今この時点で起きている環境の変化に、適切な対応、言い換えれば「進化」を求められるに違いない。

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