今年倒産した上場企業(2009年最終版)
2009/12/30 17:41


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まずは今年に入ってから、5月1日時点の上場企業における倒産企業一覧。1月に4件、2月に7件、3月に3件、4月に2件、5月に1件、6月に1件、9月に1件、11月に1件、合計で20件となる。

↑ 2009年における上場企業の倒産一覧(12月30日時点)
なお「不動産」には直接の不動産売買以外に不動産投資、不動産関連事業も含めてある。詳細に分類してもあまり意味をなさず、まとめた方が状況を把握しやすいというのがその理由。
次に、セクター(業種)ごとに負債総額を累計し、負債総額全体に占める割合をグラフ化する。

↑ 2009年に倒産した上場企業の負債額区分(12月30日時点)
不動産、建設など「不動産・建設」絡みが多いのは周知の事実の通り。9月の1件・11月の1件とも不動産及び建設関係では無かったため、両区分の比率はほとんど変わりない。また、今回は区分をやや細かくしてみたが、「その他金融」の負債総額の大きさ、そしてその大部分を占めるSFCG(8597)の影響度の大きさが改めて確認できよう。
負債総額の上位10位を並べてみると、相変わらず不動産業界の苦境、そしてSFCGのイレギュラーさが分かる。何しろ負債総額上位10位のうち、SFCG以外はすべて不動産・建設業なのだから。

↑ 2009年における倒産上場企業負債総額上位10位と負債額(億円)(12月30日時点)
今年も不動産・建設の大型倒産が相次いでいたのは、このグラフを見ても明らかだ。それと同時に、SFCGがいまだに最上位に君臨していることも見逃せない。同社の負債については未だに不明な点も多く、【昨今のニュースで報じられている限り】においては、未だに破産手続きが終わっていないとのこと。債権額は3兆円を超えたのに対し、回収できた資産はわずか38億円・資産の大部分は破たん前に大島健伸元会長の関連企業に移ったままと伝えられている。恐らくは来年にかけても処理は続き、昨今の上場企業に関連した大規模な経済事件として、歴史に名を残すことだろう。

↑ 2008年と2009年における上場企業倒産件数(12月30日現在)
昨年2008年の上場企業の破たん傾向は、前半こそおとなしかったものの後期から加速化。それが年を改めてからも継続状態にあった。しかし後半に入るとまるで息を止めたかのように静かなものとなり、わずか2件に留まっている。これは冒頭で一部触れたように、そして最後のまとめで解説するが、「事業再生ADR」の利用など「企業の破たん」以外による上場廃止・上昇廃止回避措置が頻繁に行われたためである。
最後に「市場から失われた資金」を計算してみる。これは上場廃止告知日におけるその企業の株価に、その企業が発行している株式総数(ヤフーファイナンスから取得)を乗じた、いわば「倒産告知時の時価総額」。倒産≒上場廃止となればその企業の株式の流動性はほとんど無くなり、破産ならほぼ資産価値はゼロとなる。民事再生や会社更生でも上場廃止後に何らかの資産価値を得られる可能性は極めて低い(まれな例外として、上場廃止後に清算された分配金が、上場廃止時の株価を上回る場合もある)。
そこでここでは、上場廃止告知日のその企業における時価総額を、「株価がゼロ」=「時価総額がゼロ」になるとみなし、そこに投じられた資金が市場から失われてしまうと考え(少なくともそれに近い額がそれぞれの株主から失われるのは疑いようもない)、計算してみることにした。突然破たんとなれば株主の売りぬけの機会も無く、この値は大きくなる。一方で倒産告知前に何らかの「気配」が感じられていれば(例えば創業者の不自然な自社株の売り抜けや、主要事業区分の他社への売却など)、投資家はそれに気づき、手持ちの株式を売り抜けようとするので、自然に時価総額も下がることになる。

↑ 2009年における倒産上場企業の倒産告知日における時価総額(≒市場から「失われた資金」)(12月30日現在)
注目の業種。
・ペースは、前半期は昨年以上、
・後半は沈静化。
・SFCGの影響が大きい。
さて、今年後半期において「企業の破たんによる上場廃止」がほとんど無くなってしまったのには理由がある。それらを箇条書きにすると次のようになる。
・破たん以外の上場廃止規定に抵触して上場廃止となった。
・事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に基づく、裁判外紛争解決手続。要は裁判以外で債権者・債務者が腹を割って話し合い、早急に事態打開の解決策を検討し合う)を用いて破たんを乗り切った。
などとなる。実際に7月以降、
債務超過……ネクステック(3767)、ゴンゾ(3755)
債務超過と株価の規定未満……ゼンテックテクノロジージャパン(4296)(上場廃止後の10月2日に民事再生)、オープンインターフェイス(4302)
100%減資……ラディアホールディングス(4723)
主事業の停止……ジャパンデジタルコンテンツ信託(4815)
などの企業が「破たん」以外の理由で「退場」を余儀なくされている。また、事業再生ADRを実施した企業も大規模な減資を余儀なくされる(株主責任を負わせなければ債権者の債務放棄・返済猶予に対する了承を得られないため)ことが多く、そうでなくとも株価は減資リスクを恐れて売り込まれ、大きく値を下げるため、株主にとっては事実上の倒産に等しい立場に置かれることも少なくない。
破たんの回避そのものは決して悪い事ではない。「オール・オア・ナッシング」よりは、まだ救いの道が残れさていた方が良いに決まっている。その観点では「破たんによる上場廃止企業の減少と、それ以外の上場廃止企業や事業再生ADRを活用する企業の増加」という、今年後半の現象は「事態の改善」と見るべきだろう。
この傾向が続けば、来年も上場企業の「倒産による上場廃止」は少数に留まるものと思われる。しかしそれが上場企業全体としての業績や資金繰り、事業状況の健全化を意味するとは言い切れない。そのことを十分に留意すべきである。
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