60年近くにわたる電気料金の推移をグラフ化してみる(最新)

2018/05/21 05:06

2018-0517近代的な日常生活を営む上では欠かせないエネルギーの一つが「電気」。家庭用で使われる電気の多くは、各電力会社が供給するものを用い、月次で使用した分だけ料金を支払うことになる。昨今では先の震災を経ての電力事情を受け、これまで以上に電気代(電気料金)への注目・関心が高まりつつある。そこで今回は【50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる】で用いた、総務省統計局による公開データ【小売物価統計調査 調査結果】を基に、電気料金の推移を確認していくことにする。

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高度成長期に上昇、その後は下落、そして…


グラフを生成・精査するデータの取得元は上記にある通り「小売物価統計調査」。東京都区部の小売価格を参考に、半世紀ほど前の1960年以降、継続して取得可能な2014年分までの年次値を随時取得していく。具体的な取得項目は東京都区部の電気代、その基本料金(電気を使わなくとも発生する固定費)と、従量制の電気量料金(基本的に1kwhあたり、最低区分)である。

一方、小売物価統計調査では2014年から2015年にかけて、少なからぬ項目の調査対象の見直し、仕様変更が行われた。今記事対象の電気料金も同様で、これまでの基本料金と従量制の電気量料金の個々項目の調査から、「1か月441kW使用したときの料金を使用した時の料金」に一本化されてしまった。過去の調査値との連続性は完全に無くなり、同一グラフの中で記述することはかなわない。そこで2015年分以降については別途グラフを生成する。2018年は年次の終了は果たしておらず、月次の4月分までしか取得できないことから、最新分となる4月の値を2018年分として計上する。

↑ 電気料金(東京都区部、円)(1960年-2014年)
↑ 電気料金(東京都区部、円)(1960年-2014年)

↑ 電気料金(東京都区部、441kW使用を想定、円)(2015年-、2018年は直近月)
↑ 電気料金(東京都区部、441kW使用を想定、円)(2015年-、2018年は直近月)

まずは2014年までのグラフ。左側が不規則な形で見た目が悪いのだが、これはグラフ中の説明の通り、対象kwh数の違いによるもの。原因は不明だが1960年代前半において短期間、計測対象とする料金の設定を頻繁に変えた形跡が元データには確認できる。そのため、この時期の数字が突出してしまっている。また同時期の従量制部分の電気代も、一部データが欠損している(。そのため、グラフ生成ソフトの機能を用いて半ば強引に直線化している)。色々と試行錯誤をしていたのだと思われるが、やはり中長期の推移を見るような機会においては都合が悪い。あらためて「継続は力なり」という言葉を思い知らされる(2014年から2015年における調査対象の見直しも同様)。

それはさておき、その特異値以外で推移を見ると、1980年代で大きく値を上げているのが分かる。特に従量制部分が5円程度跳ねあがっている。これはいわゆるイラン革命に端を発した「第2次石油危機(オイルショック)」の影響によるもの。石油価格が上昇したため、その石油を使って発電を行う火力発電がメインを占める電気も、値上げを余儀無くされたわけだ(これを教訓として、以後日本ではエネルギー源の分散化が至上命題となっていく)。

以降、基本料金はほぼ横ばい、従量制部分はむしろ値を下げていた。しかし、2005年以降はじわじわと、昨今の資源価格高騰時期にはやや急カーブを描いて上昇しているのが確認できる。

2015年分以降については、縦軸の底がゼロでは無く1万1000円であることに注意した上で見ても、減少から上昇に転じている。減少は2015年夏半ばごろから生じていた、原油価格などのエネルギー価格の相場減退に伴う料金引き下げの影響を受けてのもの。2017年後半以降は相場は上昇に転じたため、電気料金も上昇を示す形となっている。

消費者物価動向を勘案してみる


モノやサービスの値段の価格の高低を判断する場合、金額の移り変わりだけで無く、当時の物価を考慮して考えた方がよい場合が多い。昔の100円と今の100円では、金額は同じでも買えるものには大きな違いがあり、価値は当然違いがある。にも関わらず「同じ金額だから同水準」と判断したのでは、少々おかしな話になる。

そこで各年の電気料金に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を算出することにした。先日の記事【過去70年近くにわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】で用いた値を基に、2018年の消費者物価指数をベースとし、各年の電気料金などを再計算した結果が次のグラフ。

↑ 電気料金(東京都区部、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(1960年-2014年)
↑ 東京都区部の電気料金推移(1960年-2014年)(円)(2017年の消費者物価指数をベースに再計算)

↑ 電気料金(東京都区部、441kW使用を想定、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2015年-、2018年は直近月)
↑ 電気料金(東京都区部、441kW使用を想定、2018年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2015年-、2018年は直近月)

例えば1980年の電気代は28.03円(1kwhあたり)とあるが、これは仮に1980年の物価水準が2018年と同じだった場合、28.03円となる次第である(消費者物価指数による修正前の値は20.95円)。

基本料金は1970年代-1980年代における2つのオイルショックの間も、実質的には横ばいの形を維持しているのが確認できる。物価連動の観点では非常に優れた価格設定である。さすがに従量制部分はオイルショックの影響を受けているが、それでも上昇幅は最小限に抑えられている。また、それ以降は少しずつ値が下がっている。そして2008年ぐらいから2014年に至るまでの上昇分は、物価そのものが安定していたこともあり、それなりに「気になる」形として表れているのも分かる。



本文中で何度か触れているが、先の震災以降は電力供給事情により、漸次電気料金が上昇していく傾向にあった。その数年間にわたる電気料金動向は別途【震災以降の電気使用量・電気代の動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))】【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))】に記した通り。漸次上昇を続けたあとは、原油価格の動向や為替レート、そしてコスト高の発電用燃料を使わざるを得ない状態、さらには運用コストのイレギュラー的増加などの複数の影響を受け、小さからぬ上げ下げの動きを示している。

過去の一時期と比べればまだ安値であるとはいえ、可処分所得が上昇する気配が感じられない以上、電気料金の値上げは、そのまま家計への負担増加につながる。状況のさらなる改善と料金の安定化を望みたいところだ。


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