70年にわたる映画観覧料推移をグラフ化してみる(最新)

2019/06/23 05:19

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019-0615【60年あまりの間の映画館数の変化をグラフ化してみる】でも解説しているが、家庭用テレビの大型化やスマートフォンの普及、インターネット上の動画配信の高性能化に伴い、映画館の存在意義が大きく問われる時代が到来している。その過程で映画観覧料に関する論議も繰り返され、【高校生の映画料金1000円に値下げ、6月からTOHOシネマズで実施】を例に挙げるように多様な実証実験も行われている。それでは過去における映画観覧料はどのような推移を示していたのだろうか。今回は【50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる】を執筆した際に利用した、総務省統計局が公開中の【小売物価統計調査(動向編)調査結果】のデータを基に、動向を確認していくことにする。

スポンサードリンク


1970年代から急上昇する映画観覧料


グラフを生成・精査するデータの取得元は上記にある通り。東京都区部の小売価格を参考に、1950年以降直近の2018年分までの年次値を随時取得していく。また月次に限れば東京都区部なら2019年5月まですでに公開済みであることから、2019年分は5月の値を適用する。

↑ 映画観覧料(円)(2019年は直近月)
↑ 映画観覧料(円)(2019年は直近月)

金額そのものとしては1950年-1970年は緩やかな上昇、1980年-1985年、1995年以降はほぼ横ばいを示している。一方で1970年-1980年と1985年-1995年の2期間において、大きく値上げをしているのが確認できる。特に1970年からの10年間で、3倍以上の値上がりを見せている。

これは単純に物価が上昇したことに加え、映画館での映画観覧に対する需要が減り、映画館の数が減少したことによるものと考えられる(カラーテレビの普及が1964年の東京オリンピック開催をきっかけとし、1960年代後半から始まっており、その影響が大きいようだ)。需要が減ったことを受け、売上を維持するために単価を高める必要性が生じたわけである。なお映画館数そのものの推移などについては冒頭のリンク記事の通り、別途機会を設けて解説している。

また1950年は64.6円とある。直近年は1800.0円。単純計算だが約27.9倍となる。

なお2014年4月からの消費税率改定に伴い、観覧料の引き上げは行われなかったため、1800円の値が継続している。このタイミングでは代わりに、各種割引料金の引き上げが実施されている(一例として【消費税率引き上げに伴う鑑賞料金の改定について(TOHO シネマズ、PDF)】の場合、「鑑賞料金全体での適正な転化になるよう、基本鑑賞料金は現行のままとし、各種割引料金を改定いたします」とし、基本鑑賞料金に変更は無いが、各種割引料金に100円(税込)が追加されている)。

また各報道にある通り、TOHOシネマズをはじめとした大手シネコンで2019年6月1日から映画観覧料の値上げが実施されている。おおよそ一般料金が1800円から1900円へと100円上乗せされる形となっているため、2020年の記事更新時には同じように直近分が1900円へと引き上げられることだろう。

消費者物価指数を考慮すると?


さて、モノの値段の高い・安いを判断する場合、単純に金額の移り変わりだけで無く、当時の物価を考慮して考えた場合が賢明である。昔の100円と今の100円では、金額は同じでも買えるものには大きな違いがあり、価値は当然違いがあるからだ。

そこで各年の観覧料に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を算出することにした。【過去70年近くにわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】で用いた消費者物価指数の各年における値を用い、直近の2019年の値を基準値として、他の年の映画観覧料を再計算する。その計算の結果を基にしたのが次のグラフ。

↑ 映画観覧料(2019年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2019年は直近月)
↑ 映画観覧料(2019年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2019年は直近月)

やはり1970年からの10年間における値上げは物価を考慮しても大きなものであったことが確認できる。一方で1985年-1995年の値上げは物価に連動したものであり、それを鑑みると横ばい、あるいはむしろ実質的な値下げであったことが分かる。そしてそれ以降は物価そのものが安定しているため、料金は1800円でほぼ変わらないから、結果として実質的な料金も横ばいを維持している計算になる。ここ数年下落の動きを見せているのは、実料金が固定された状態で、逆に物価が多少ながらも上昇している結果によるもの。

なお消費者物価指数動向を考慮した上で、1950年の映画観覧料を計算すると539.6円。現在はその3.3倍ほどに相当することになる。



映画館2番目のグラフ(消費者物価の変動を考慮した図)を見ると、1970年代以降は映画の観覧料は実質的にほぼ変わらない実態が把握できる。にもかかわらず昨今において「映画の観覧料が高い」との意見が多々聞かれるのは、実料金の額面の問題ではなく、「映画を映画館で観ることへの個人の価値」が減少していると考えれば道理は通る。昔は「1800円出しても観る価値はある」と考えていた人が多数派だったが、今は「1800円ほどの価値は無い」との意見が大勢を占めている。

これが単純に映画の質の低下を意味するのか、それとも冒頭で触れたように、それ以外の娯楽(テレビ、ビデオ、インターネット、携帯電話など)の普及で相対的に「映画館で映画を観る」ことへの価値が下げられたのかは、今件の値からのみでは分からない。しかし周囲を見渡す限り、後者の要因がメインであることは間違いない。時代の変化に伴った変革・進化を、映画館も求められているに違いない。


■関連記事:
【自宅の方が楽、料金が高い、映画館が無い…なぜ映画館で映画を観ないのか、その理由をグラフ化してみる】
【映画館での映画鑑賞、年々減る傾向に】
【映画館で映画を観ない3大理由「高い」「行くのが面倒」「観たい映画が無い」】
【映画館でパンフやグッズ、食べ物買ってる?】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2019 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS