「収入をもっと平等に」か「収入差を広げて努力を刺激する」か、世界各国の考え方(2017-2020年)(最新)

2021/01/29 05:32

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2021-0120人は欲を行動の燃料とする生き物である以上、いかなる選択肢でも対価が同じならば意欲を失い、社会は活動を停止してしまう。罰則を設けて強制的に行動させる手立てもあるが、状況の進化発展はおろか、現状維持も難しくなってしまう。一方で過度の成果主義を取り入れて平等的な保証がないと、生活弱者は生きる道をなくし、荒廃した社会が待ち構える状況と化してしまう。要はバランス感覚の問題ではあるのだが、それでは人々はそのバランスについて、どのような思惑を持ち、それは国によって違いが生じるのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している【World Values Survey(世界価値観調査)】から、各国の国民単位における収入面での格差問題などについて、考え方を比較していくことにする。

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平等か、格差による努力刺激か。考えは国それぞれ


今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項などは先行記事の【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参照のこと。

次に示すのは収入格差に関する2つの考え方のうち、回答者はどちらをより望むかについて、10段階で答えてもらったもの。1つは「収入はより平等であるべき」、もう1つは「成果に従う形での収入の差別拡大化を促進すべき」。完全な平等化を1、完全な努力に従う差別拡大化を10とし、自分の考えに一番近い値を答えてもらい、それを平均化している。例えば全員が「完全に平等であるべき」と答えていれば1.00になる。つまり数字が大きいほど、成果報酬主義を望む声が大きいことになる。

↑ 収入はもっと平等にすべきか、個人の努力を刺激するよう収入格差を拡大すべきか(1(平等)-10(格差)の選択肢での平均値)(2017-2020年)
↑ 収入はもっと平等にすべきか、個人の努力を刺激するよう収入格差を拡大すべきか(1(平等)-10(格差)の選択肢での平均値)(2017-2020年)

真ん中の値は5.50であることから(回答選択肢に5.50はないが)、おおよそイタリアより左側にある国が「成果報酬主義寄り」、右側にある国が「平等主義寄り」ということになる。そして後者においては特にチリが、平等主義に強いこだわりを抱いていると見なすことができる。(元)社会主義国家や福祉国家ほど平等主義寄りかと思えばそうでもなく、日本やアメリカ合衆国などが顔を見せる一方、成果報酬主義にロシアやスウェーデン、ポーランドなどが入っているのが興味深い。

日本の値は5.36。いくぶんながらも平等主義志向。過去においてもおおよそ変化はない。もっとも前回調査(2010-2014年)では同一の条件下で4.68の値が出ているので、それと比べるとやや成果報酬主義に寄った感はある。

世の中は努力をすれば報われるのか、それとも


平等主義・成果報酬主義と似たような話として、世の中は努力をすれば報われ、生活はよくなるか否かという話がある。そこで長い目で見て勤勉ならば生活はよくなるか、それとも生活がよくなるとは限らず、それ以上に運やコネが必要かについて同じように質問し、その結果を集計したのが次のグラフ。原文の設問では1が「長い目で見れば勤勉は常によい生活をもたらしてくれる」、10が「勤勉は常に成功をもたらすわけではない、むしろ運やコネの方が重要」とあり、数字が大きいほど努力は必ずしも実を結ぶとは限らないと考えている人が多いことになる。

なお未集計の国が複数あるため、最初のグラフと比べると国数が少なくなっている。

↑ 勤勉ならば生活はよくなるか、勤勉でも生活がよくなるとは限らないか(1(よくなる)-10(限らない)の選択肢での平均値)(2017-2020年)
↑ 勤勉ならば生活はよくなるか、勤勉でも生活がよくなるとは限らないか(1(よくなる)-10(限らない)の選択肢での平均値)(2017-2020年)

真ん中の値5.50を超えている、つまり勤勉でも生活がよくなるとは限らない派はイラクのみ。それ以外の国は概して努力、勤勉さが成果に結びつくと信じている人が多い・思いが強いことになる。

実際のところは多分に努力・勤勉さは往々にして必要ではあるが、それでも成功に結び付かない場合も少なくない、そして指摘の通り運やコネが成功への架け橋となる場合も多々ある。中には努力も勤勉さもなく、運とコネだけで生活環境が改善した、成功した人もいるだろう。とはいえ努力や勤勉さが生活の改善、成功の手法としてはもっとも確実で確かな方法であることにも違いない。

努力の必要性、成功への結びつきを強く信じているのはフィリピン、中国、アメリカ合衆国、エジプト、イランなど。

日本はといえば4.86で、努力が結果を生み出すことを期待してはいるが、やや達観した感はある。年齢階層別区分はかなり大雑把だが、16-24歳で5.03、25-34歳で5.56、35-44歳で4.98、45-54歳で4.84、55-64歳で4.81、65歳以上で4.61となり、おおよそ若年層ほど努力と成果の直結への期待が薄いことがうかがえる。



それぞれ国の産業や文化、社会的制度によって、成果や努力と報酬との間における、正当だと認識される関係には大きな違いがあるため、単純に国ごとの数字のみでの比較は誤解を招きかねない。この点には注意してほしい。一方で個々の国の平等主義的な流れや実力主義的な傾向がある程度数字として表れているのは、やはり興味深い話ではある。

それぞれの国の事件や政策決定を見聞きした時に、これらの数字と照らし合わせることで、理解・納得することもあるに違いない。


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