朝日新聞の中間決算短信から「おサイフ事情」をチェックしてみる(2010年3月期中間決算版)

2009/11/25 07:40

朝日新聞社イメージ【テレビ朝日(9409)】は2009年11月24日、親会社にあたる朝日新聞の中間決算短信を発表した。朝日新聞そのものは非上場の会社のため、決・諸表は上場企業のそれに似てはいるものの、いくつかの項目が省かれたシンプルな内容。しかしその中には、各大手新聞社、そして朝日新聞特有と思われる「おサイフ事情」をかいまみることができる。今回は簡単ながらも公開資料をもとにチェックを入れてみることにする。

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まず連結経営成績は次の通り。

売上高……2327億8000万円(▲13.7%)
営業利益……▲43億5600万円(*▲764.3%)
経常利益……▲3億2300万円(*7.2%)
当期純利益……▲139億1400万円(*64.5%)

※比率は前年同期比、「▲」はマイナス(以下同)。
※前年がマイナス値の場合は絶対値を元に%を算出(改善率に該当。以下同)
※前年同期比前に「*」があるものは、前年同期の金額もマイナスの値

朝日新聞の2010年3月期中間決算・連結営業成績前年期比
朝日新聞の連結営業成績前年期比

続いてせっかくなので個別、つまり本業の新聞事業における経営成績も。

売上高……1633億7900万円(▲4.8%)
営業利益……▲55億9500万円(*▲73.2%) 
経常利益……▲34億3800万円(*▲19.7%)
当期純利益……▲28億3700万円(▲1121.3%)

※前年同期比前に「*」があるものは、前年同期の金額もマイナスの値

朝日新聞の2010年3月期中間決算・個別営業成績前年期比
朝日新聞の個別営業成績前年期比

昨年データを元にした記事【朝日新聞の最新版「おサイフ事情」をチェックしてみる】でも触れているが、売上の減少は著しく、本業の収益こと営業利益の赤字は増加の一途をたどっている。ただしその他事業などで前年同期比よりはやや状況が改善され(とはいえ、大きな赤字を計上していることに違いは無い)、前年同期比がプラスとなっている。営業利益部分は個別短信を見れば分かるように、新聞事業が大きな足かせとなっているのが確認できよう。また、経常・純利益が前年と比べてマシになっているのは、主に前回の大きな出費原因となった寄付金の要素がほとんど無くなったのが大きい。

なお、以前に一部読者から「金額がマイナス値の場合はリリースにもあるように、前年同期比は記述すべきではない」という意見もいただいたが、当サイトでは変化を分かりやすくするため、絶対値などを元に算出を行っている。要は「前年同期と比べ」どれだけ状況が改善したか・悪化したかを確認するための値、という意味なのだから。

損益計算書を確認する
それでは中間決算短信同様に、損益計算書でお金の流れを確認する。

朝日新聞の決算連結損益計算書(今期2010年3月期と、前期2009年3月期)
朝日新聞の決算連結損益計算書(今期2010年3月期と、前期2009年3月期)

前年同期比と比べると、財務状態が悪化したポイントは大きく4つ。

(1)本業である新聞事業の赤字
新聞部数の発行数減や経費削減などで売上原価が-12.3%と縮小しているが、それ以上に売上が落ち込み、-13.7%を記録している。%値はさほど大きく無いが元々の額が巨大なため損失額も大きい。さらに前年の中間決算と比べると売上前年比が-6.2%から-13.7%と悪化している状況が確認できる。新聞の売上減少(販売部数・広告収入)の落ち込みが急降下状態にあること、そしてその状況において経費削減のスピードが追い付いていないことが分かる。

(2)寄付金の減少
前年においてグループ体制の変更のために色々とやりくりした過程で登場した巨額の「寄付金」が今期はほとんどなく、これが営業外費用を大きく減らす要因となっている。これが営業成績上はプラスに働いており、「前年と比べると変化率において、営業利益よりも経常利益の方が良い値を示している」主要因となっている。

(3)手持ち投資有価証券
昨年はいわゆる「損切り」などをしたせいで大きな売却損を計上した投資有価証券項目だが、今年は額を1ケタ減らしている。その分減損損失が11億円ほど確認でき、株価の低迷次第ではさらにお腹が痛くなるような状況になりうる可能性を示唆している(実際に貸借対照表で多額の有価証券を抱えているのが分かる。少なからずはグループ維持のため、半永久保有としてのものだろうが)。

(4)法人税の還付
要は「払いすぎた税金が降り戻されましたよ」というもの。規模が大きくなると税金も大きくなるが、赤字の際の還付金も巨大なものとなる。とはいえ、(帳簿上とはいえ)「赤字」の上での払い戻しであり、かつ「もらえるもの」ではなく「払い過ぎていたものが返ってきただけ」なので、喜んではいられない。とはいえ、これが今中間期における純利益を押し上げたことに違いは無い。

さらにポイントを絞ると「本業の新聞事業マズいね」「今年は特別費用が無いし税金も戻ってきてラッキー」「株価下がったらまた大変だよ」というところだろうか。



先に【新聞の販売部数などをグラフ化してみる】で解説したように、日本の新聞業界はさまざまな問題を抱え、満身創痍の状態にある。しかもそれに対して「怪我などしていない」と強情な態度でほとんど手当をせず、歩き続けている状態ともいえる。さらに「爆弾」ともいえる「押し紙問題」を内に抱え、このタイマーが確実にカウントを続けている状態でもある。

本文中で触れているが、本業の新聞事業において「売り上げ規模の縮小が急過ぎて、体制の改変が追い付かない」状態にあり、これが経営状態を悪化させる大きな要因となっている。そして「爆弾」がもし破裂しはじめたとしたら、売上もさらに落ちるのは間違いなく、特損も色々と発生し、手の打ちようがない状態に陥るのは容易に想像ができる。

そのような特殊事情が無く、日本と比べてけた違いの体質改善努力をしているアメリカの新聞産業においてですら、【米新聞産業,暗いトンネルから抜け出せない(メディア・パブ)】が報じているように、袋小路状態にあるのは多くの人がご承知の通り。果たして日本の新聞市場は今後どのような動きを見せるのか。まずは「新聞とは何か」「どうあるべきか」という根本的な問題から、考え直す必要にすら迫られているのかもしれない。

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