60年あまりにわたる民間・公営賃貸住宅の家賃推移をグラフ化してみる(最新)

2020/05/19 05:23

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2020-0505当サイトで毎月更新している「新設住宅戸数動向」は新築住宅の建設動向を記したものだが、個人の買取の住宅(持家)や売り出し用の住宅(分譲住宅)以外に、貸し出し用の賃貸住宅(貸家)の新設の動きも反映されている。住まいの需要として賃貸住宅は未だ民間・公営ともに大きな需要を持ち、その需要に応えるべく供給が行われている次第である。今回はその賃貸住宅の家賃について、【50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる】を執筆した際に使った、総務省統計局が公開している【小売物価統計調査(動向編)調査結果】の値を基に、その移り変わりを精査していくことにする。

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急上昇した民間賃貸、漸増・横ばいを見せる公営賃貸


グラフの作成・精査を行うデータの取得元は上記にある通り「小売物価統計調査 調査結果」。基準としたのは東京都区部におけるもの(「民間(民営)借家」「公営借家」について、1か月あたり・3.3平方メートル(1坪)の家賃。敷金・礼金や共益費、管理費などは含まれていない)であり、地方の値とは異なることを記しておく。直近の年次公開値は2019年分なので、その値を取得。また2020年分に関しては月次の最新値を暫定的に適用する。

一方小売物価統計調査では他の記事でも触れているが、2015年1月から小さからぬ規模の調査項目の差し換えや仕様変更が実施された。今件記事の対象項目でも「公営賃貸(都市再生機構住宅)」に該当する項目が調査対象から外れ、データの連続性が失われる形となった。そこで代替として、1991年分から計測値が取得可能な「公営賃貸(都道府県営住宅)」の値を公的賃貸の代表値として反映させている。

↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃(東京都区部、1坪=3.3平方メートルあたり、円)(2020年は直近月)
↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃(東京都区部、1坪=3.3平方メートルあたり、円)(2020年は直近月)

民間の賃貸住宅は1967年に垂直に近い動きを見せたのち、キツめの勾配で上昇を続けており、1990年後半になってようやく上昇が止まることになる。一方公営住宅は1975年前後に上昇カーブがややキツめになったものの民間と比べれば随分とリーズナブルなままで推移し、やはり1995年以降は横ばい、一時期は減少傾向まで見せている(都道府県営住宅では明らかに減少している)。

1960年代の民間賃貸住宅の家賃急上昇の理由に関して多数資料を当たったものの、確定できる事象は見つからなかった。影響を及ぼしたと思われる原因としては、ベトナム戦争特需に伴う住宅(建売)ブームの到来などで、賃貸住宅の相場も相対的に上昇したことぐらい。もっともそのような時期でも公営住宅の家賃上昇率は穏やかであり、「家計に優しい」存在だったことが分かる。

民間は金融危機勃発をきっかけに下落に転じ、ここ数年でその動きを止めて再び上昇の気配を見せている。他方公営は今世紀に入ってからはおおよそ横ばいを維持し続けている。公民の差は大きく開いたまま。

消費者物価指数動向を勘案すると


さて、世帯内における支出の少なからぬ割合を占める家賃の場合、単純に金額の移り変わりだけでなく、当時の物価を考慮した方が道理は通る。家計全体に対する負担は金額そのものではなく、物価を考慮した上で比べるべきとの意見は説得力がある。例えば同じ家賃にしても、50年前の5万円と今の5万円では大きく価値が異なる。

そこで各年の家賃に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を算出することにした。【過去70年にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】で用いた消費者物価指数の各年における値を基に、直近の2020年の値を基準として、他の年の家賃を再計算する。例えばこの試算では1959年における民間賃貸の家賃は1961円との値が出ているが(実測値は337円)、これは「1959年当時の物価が2020年と同じだった場合、民間賃貸住宅の平均家賃は1961円(1坪あたり)になる」次第である。

↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃(東京都区部、1坪=3.3平方メートルあたり、2020年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2020年は直近月)
↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃(東京都区部、1坪=3.3平方メートルあたり、2020年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2020年は直近月)

やはり民間賃貸では住宅ブームの1960年代、特に60年代後半において、大規模な家賃の「実質的」値上げが起きていることが分かる。その後は1980年前半までほぼ横ばいを見せたものの、バブル時代の到来とともに一段階上昇し、あとは穏やかな値上げが漸次行われている形だ。そして金融危機勃発以降は漸次値下がり、ここ数年では上昇。

一方で公営賃貸ではこの50年で実質2倍足らずの値上げしか行われておらず、その値上げ時期も1970年代後半から1990年代後半までの間に限られているのが分かる。色々な意味で良心的といえよう。



余談になるが。民間と公営それぞれの賃貸住宅の家賃推移を併記できたので、最後に両者間の家賃比較を計算し、その実情を検証する。すなわち同年・同水準において、公営賃貸の家賃が、民間賃貸の何パーセントに当たるかを確認する。もっとスマートに言い換えると、「公営賃貸住宅のお得度」となるのだろうか。無論この値が低い方が、お得度は高くなる。なお上記説明の通り、「公営賃貸(都市再生機構住宅)」は2014年で値の公開が打ち切られたので、「公営賃貸(都道府県営住宅)」「公営賃貸(都市基盤整備公団住宅) 」との比較も併記する。

↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都市再生機構住宅)の民間賃貸に対する比率)(2014年まで)
↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都市再生機構住宅)の民間賃貸に対する比率)(2014年まで)

↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都道府県住宅)の民間賃貸に対する比率)(2020年は直近月)
↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都道府県住宅)の民間賃貸に対する比率)(2020年は直近月)

↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都市基盤整備公団住宅)の民間賃貸に対する比率)(2020年は直近月)
↑ 民間・公営の賃貸住宅家賃比較(東京都区部、同水準における公営賃貸(都市基盤整備公団住宅)の民間賃貸に対する比率)(2020年は直近月)

総務省統計局のデータベース上で値が存在する最古の1959年においてはほぼ同列だった民間・公営(都市再生機構住宅)間の家賃比率(0.99)も、住宅ブーム(と需要の急増)とともに差が開くようになる。これはこの時期に雨後のタケノコのように建設された公団住宅(団地)が、主に所得がさほど多くない人向けに作られたものであることが一因。その後1970年半ばまで差は開くが(民間賃貸の家賃上昇率が急激なのが主要因)、1970年後半からバブル時代までには4割前後にまで上昇し、あとは2014年に至るまでほぼ横ばいを続けていた(わずかながらの上昇とも表現できるが)。

「公営家賃(都道府県住宅)」に限れば、一番古い値ですら0.28と安い水準にあるが、これは取得可能な値が1991年以降のため当然といえば当然となる(1991年時点の民間・公営比率は0.37)。そして1996年まで上昇したあとは2004年ぐらいまで下落を続け、それ以降はほぼ横ばいでの推移となる。「公営家賃(都市基盤整備公団住宅)」では元々高めの水準で、さらに経年変化でもほぼ一様に上昇中。2019年でやや失速してしまったがおおよそ6割の基準にある。

ここ数年の間に更新料に関する物議が大いに行われ、それに伴い「更新料の廃止=家賃に転嫁」との動きも一部で見られている。他方、賃貸住宅の供給量の大幅増加に連れ、需給バランスがやや崩れ気味なのも事実。家賃動向はほぼ横ばい、新規契約時にもやや減少の動きすら見られる。これらの動きが中長期的な動きにどのような影響をもたらすのか、見据えていきたい。


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