諸外国の人たちがどんな組織・制度に信頼を寄せているか(下)……諸外国編(2017-2020年)(最新)

2021/01/24 05:20

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2021-0112先行記事【諸外国の人たちがどんな組織・制度に信頼を寄せているか(上)……日本編】でも言及している通り、国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している【World Values Survey(世界価値観調査)】の公開値を基にし、各国の国民単位での物の考え方や思考傾向などをさまざまな視点から確認している。今回はその記事の下編として、日本以外の国をいくつか選び、組織や団体などに対する信頼度の動向を見ていくことにする。

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今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項は先行記事の【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参考のこと。今回信頼に関する精査対象となる組織・制度は上編同様。「宗教団体」「国軍(あるいはそれに類する軍事組織)」「新聞・雑誌」「テレビ」「労働組合」「警察」「裁判所」「政府」「政党」「国会」「行政」「大学」「大企業」「銀行」「環境保護団体」「女性団体」「慈善団体」「国連」。

それぞれの組織・制度に対して選択項目に「非常に信頼する」「やや信頼する」の2選択肢を肯定派、「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」の2選択肢を否定派とし、他に「分からない」「無回答」を用意した上で、どれか一つを選んでもらう(「無回答」は実質的に、他の選択肢を選ばなかった人が該当する)。そしてこのうち「非常に信頼する」「やや信頼する」の値を足して、そこから「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」の値を引き、各組織・制度の信頼度(DI値)を算出する。この値が大きいほど、その国では対象の組織・制度が信頼されていることになる。

まずはオーストラリア。先の記事にある通り、「新聞・雑誌」「テレビ」への信頼度が一番低かった国である。

↑ オーストラリアにおける組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ オーストラリアにおける組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

一番信じているのは「国軍」、そして「警察」。「公的実力行使組織」への信頼度が非常に高いことが分かる。また、日本では「自衛隊(国軍)」に次いで高い値を示していた「裁判所」への値が低めで、それよりも「大学」「女性団体」の方が高いのが興味深い。一方で「新聞・雑誌」「テレビ」の値が押し並べて低く、従来型大手メディアへの信頼度がとりわけ低い状態にあることが分かる。

続いてメディア先進国でもあり、従来型メディアへの信頼度が低いアメリカ合衆国。

↑ アメリカ合衆国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ アメリカ合衆国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

「警察」もさることながら「国軍」への信頼度が極めて高い。これは「9.11.」に始まる愛国心の高まりが反映されているものと思われる。また、「●×団体」のような各種民間団体の値が高いのも特徴の一つ。この傾向はオーストラリアと同じで、よしにつけ悪しにつけ、民間による自主活動が進んでいる結果なのだろう。

他方従来型メディア以上に「国会」や「政党」に対する信頼度は低い。「政府」はまだそれらよりもマシだが、マイナス値には違いない。また本部が置かれている国にもかかわらず、「国連」の信頼度がマイナスなのは意外ではある。

続いて何かと話題に上る韓国。

↑ 韓国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ 韓国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

意外にも最高値の信頼度を見せたのは「銀行」、そして次いで「国連」が続いている。今の国連事務総長アントニオ・グテーレス氏が就任したのは2017年で、潘基文氏はすでに辞めているが、韓国での今調査実施年は2018年。直接の影響は無いものの、余韻的なものがあるのだろうか。もっとも過去のデータを参照する限りでは似たような値を示しており、元々韓国では国連に対する信頼度が極めて高いようだ。また、「大学」や「慈善団体」への信頼度も高く、「国軍」はそれに続く程度に留まっている点にも注目したい(「警察」よりも低い)。

おおよその組織に対する信頼度は高いが、「政党」と「国会」は別。「政府」や「行政」がプラスであることと比べると、この信頼の無さには疑問符すら頭に思い浮かばれる。

最後に中国。共産圏で、かつ一党支配の国ということもあり、かなり特殊な数字が出ている。さらに「国連」に関しては現在集計中なのか、それとも質問そのものができなかったからなのか、記事執筆時点では値が公開されていない(もっとも表示が「Not asked」となっているため、質問しなかったのだろう。常任理事国であるにもかかわらず、不思議な話ではある)。

↑ 中国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ 中国における組織・制度への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

この値をそのまま信じるならば「政府も国会も軍隊も政党も皆が皆信頼のおける、ハッピーパラダイスな国家」ということになるのだが(それでも「宗教団体」がマイナスなのもこの国らしい。恐らくは特定の団体がイメージされているのだろう)、数字をそのまま受け止めてもよいのかどうか、そしてこのような結果そのものが「信頼度」の総値としてどうなのか、色々と考えさせられるものがある。例えば「政党」なら事実上一党しか選ぶものがないため、まさに「イエスかハイか」を選択させられているようなものとなるからだ。



以上、2回にわけて諸外国の「組織・制度への信頼度」を確認したが、これらの値は2017-2020年当時のもので、中には2017年に調査を実施した国もあるため、現在ではかなり変動している可能性がある。特に景況感の変化、インターネットの普及を起因とする情報伝達スピードと量の加速化、各種国際情勢の変化、そして新型コロナウイルスの世界的流行などにより、各組織・制度の権威が変動している可能性は否定できない。

しかしながら、今件のデータを読み解くことで、各国が持つ根本レベルでの組織・制度に対する思惑や認識は、大体の範囲でつかみとれるに違いない。

…なお「2回に分けて」としたが、チェックが望まれる国はまだいくつか確認できるため、もう少し別の機会に精査を行う予定。もし「この国の動向が見てみたい」との類の話があれば、お聞かせ願えれば幸いである。


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