世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度(2017-2020年)(最新)

2021/01/23 05:36

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2021-0111人の価値観は個人ベースでも大きな違いを生じるが、同一環境下に置かれることで一定の同一性を示すことが多々ある。その区分の代表的な様式が「国家」。国毎にインフラの整備状況や法令、文化形態が違い、その環境下で長年暮らしていくうちに、価値観は国家単位で違いを見せるようになる。今回はその国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している【World Values Survey(世界価値観調査)】から、「主要国における新聞・雑誌やテレビ(要はマスコミ)に対する信頼度」について確認をしていくことにする。

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今調査結果は世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000-2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっていないようで、値が掲載されていない国もある。例えば直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、現時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

次に示すのは従来型のメディアのうち新聞・雑誌、およびテレビに対する信頼度。選択項目として「非常に信頼する」「やや信頼する」(以上肯定派)「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」(以上否定派)「分からない」「無回答」が用意されており、どれか一つを選択することになっている(「無回答」は選択する、というよりは結果的なもの)。

この選択肢のうち今回は「非常に信頼する」「やや信頼する」の肯定派を単純に加算して、その値から「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」の否定派の値を引き、各メディアへの信頼度(DI値)を算出することにした。つまりこのDI値が大きいほど、その国では対象メディアが信頼されていることを意味する。

なおDI値を算出しているのは基本的に前回調査の際に掲載した国に加え、現時点で回答値が掲載されている国のうち注目すべき国に厳選している。

↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

↑ 世界各国におけるテレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)
↑ 世界各国におけるテレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017-2020年)

今サイトが主に日本在住者に向けて情報発信をしていることから、日本の項目を赤で着色した。第一印象として把握できるのは、日本は先進諸国の中ではずば抜けて、そして全体でも相当の上位に位置していること。特に「新聞・雑誌」ではフィリピンに次ぐプラス41.8%という、「妄信」に近い群を抜いた高値となっている。【「新聞って信頼できるよね」「正確だよね」はそれぞれ6割、ただし若者と高齢者の間には大きなギャップも】【新聞記事や特集7割・テレビ番組8割……シニア層の情報源、テレビや新聞が圧倒的】でも解説している通り、日本国内では特に高齢層において新聞などの従来型メディアの中でも紙媒体、そしてテレビを信頼する傾向が強い。この傾向は世界共通のイメージがあるように思えたが、実のところは日本など少数国の特異的な現象である可能性はある。

例えばアメリカ合衆国では(でも)【アメリカ人がいつテレビを見ているのかがひとめで分かる図】【やはりテレビはお年寄りほど長時間視聴…米メディア利用性向や携帯端末の動画視聴のポイント】の調査結果などのように、高齢者の方がテレビ視聴時間は長い。にもかかわらずテレビへの信頼度が全体として低いままなのは、「テレビは信頼できないもの」と割り切った上で、娯楽として視聴しているからなのだろう。

また、国の名前の並びをよく見ると、全般的に中東・アジア系諸国は「テレビ」「新聞・雑誌」への信頼度が高い。民族性との言葉でくくるのは多分にリスクがあるが、メディアや情報に対する考え方が地域単位で根底部分から異なるのかもしれない。



今件調査結果は2017年から2020年に至るもの。精査の上ではその間の値として扱われている。日本の場合は2019年調査とあり、2011年の東日本大震災によるメディアに対する価値観の変容ぶりが反映されたものとなっている。

参考までにデータが確認できる範囲で、日本の時系列的な値の変化を追いかけた結果が次のグラフ。時系列での比較は誤差が大きくなる可能性を考慮し、値の表記は整数値までに留めている。

↑ 日本における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)
↑ 日本における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)

↑ 日本におけるテレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)
↑ 日本におけるテレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼−あまり信頼しない・まったく信頼しない)

調査期間がとびとびになっており、横軸の時間の流れは均一でないことに注意してほしい。一方、世紀を区切りに大きな価値観の変容が生じ、現在における日本の過度なまでのテレビや新聞などへの信頼は今世紀に入ってから構築されたことがうかがえる。調査様式の変更による可能性もあるが、他国の同一時系列では似たような変化が無いため、やはり日本の価値観の変化によるものだろう。

この前後に起きた社会的事象といえば、高度経済成長の終えんやバブル崩壊などが挙げられる(インターネットの普及浸透は2005年前後のため、時系列的に合致しない)。経済成長の終えんなどとともに、日本人の価値観に小さからぬ変化が生じたことは十分考えられよう。

そして東日本大震災以降では特に新聞・雑誌への信頼度が大きく落ちていることが確認できる。言わずもがな、ではあるが同時に、この程度で済んだのか、とも解釈できる値ではある。


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