「相対的貧困率」について色々と考えてみる……(4)「経済格差」は「世代間格差」!?

2009/10/21 17:21

若者と老人イメージ厚生労働省から発表された「相対的貧困率」を元に、色々考えてみる特集記事その4にして最後。その3では別の視点から「経済的格差」を見てみたところ、最近ではむしろ縮小してる傾向もあることや、「相対的貧困率」に連なる「経済格差」はむしろ「世代間・年齢格差」ではないか、という話になったわけだが……。

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日本では人口比率で見ると、急速な高齢化が進んでいるってのは、常日頃の生活でも分かるはずだし、例えば【「本当の」少子化対策が急務であることがひとめで分かる図】【子どもと成人とお年寄りの割合の変化をグラフ化してみる】でも明らかだよね。

そして賃金をたくさんもらえたり、不動産を手にして家賃の心配が要らなくなったり、遺産を相続するなどで色々とお金周りが良くなった中堅-高齢層が(人口全体比で)増えれば、格差が広まるのはある意味当然かもしれないね。【世帯主年齢階層別の金融資産保有割合をグラフ化してみる】【年齢階層別の金融資産保有割合をグラフ化してみる】などの記事を覚えている人も多いはず。

それでは「相対的貧困率」につながる、所得……は税金や住宅所有の有無があるので計算が難しくなるから、その値にほぼ比例するであろう収入について(【働けど働けど……収入と税金の変化をグラフ化してみる】)、年齢階層別にどんな配分になっているのかを見てみることにしよう。

元データは総務省の「家計調査」だ。ここから【家計調査年報(家計収支編)平成20年】を選んで、そこから【政府統計の総合窓口「e-Stat」】に。そして「家計調査」で検索して、2008年のデータから「家計収支編 > 総世帯 > 年報 > 年次 > 2008年」を選んで、「3.年間収入五分位・十分位階級別総世帯・勤労者世帯」と「12.世帯人員・世帯主の年齢階級,世帯属性別世帯分布」をピックアップ。これでそれぞれ「各年収10区分年収階層別の世帯数区分比率」と「各年収10区分年収階層別の年齢別比率」が分かる。

まず、各年収区分に、どの年齢層(ここではすべて世帯主の年齢)の割合が多いかをチェックしたグラフ。

各年収階層別・世帯主年齢階層所属率(2008年・家計調査)(年収単位:円)
各年収階層別・世帯主年齢階層所属率(2008年・家計調査)(年収単位:円)

60歳代は定年退職前で賃金が大きな場合と、退職後で年金生活を迎えて年収が大きく下がる両パターンがあるので、ほぼすべての年収階層に一定割合がいるのが分かるね。それと年金の額はかなり限られるので、比較的低年収層に大きな割合なのも分かる。40-50代の人たちの割合が高年収層に多いのも、ね。

もちろんこれはあくまでも「各年収層」の割合。それぞれの層に居る人数までは考慮されていない。そこで、「3.年間収入五分位・十分位階級別総世帯・勤労者世帯」と「12.世帯人員・世帯主の年齢階級,世帯属性別世帯分布」双方の数字をかけあわせて各項目ごとの対象人数を概算し、その上で改めて「世帯主年齢階層別の」年収区分所属率をグラフ化したのが次だ。まぁ、当然といえば当然の結果が出るわけだね。

各世帯主年齢階層別年収区分所属率(2008年・家計調査)
各世帯主年齢階層別年収区分所属率(2008年・家計調査)

若年層はグラフにあるように賃金も低い。貯蓄も無い。住宅も持ってない場合が多い。歳を経るとお金も溜まり賃金も上がり、住宅を買えるようになるかもしれない。そして定年退職を迎えると年金生活となり、再び年収は下がる……というあんばい。

ただ、最初の「相対的貧困率」で「貧困層」に該当する割合が多い20代までと60・70代の条件を比べてみると、「若年層……正社員でも給与は頭打ち、派遣などもあわせ賃金は抑えられたまま・貯蓄は無い・住処は賃貸」「高齢者……年収は年金と退職金の切り崩し・貯蓄はそれなり・住処は持ち家の場合が多い(もっとも【賃貸住宅の平均居住年数をグラフ化してみる】にもあるけど、高齢者の賃貸住宅住まいが増えているのも事実)」という図式が見えてくるね。



と、色々と図をならべたり引用してみたわけだが、そもそも論として「相対的貧困率」そのものにどれほどの意味があるのか(ぶっちゃけちゃいました(汗))というのをはじめ、「相対的貧困率の拡大を懸念するなら、その主要因は世代間格差にあるんだから、子供手当の理由づけにするんじゃなくて、むしろ若年層全体の経済的支援と、高齢層から若年層へのスマートかつ誰もが納得のいく資産移動を後押しすべきじゃないの?」という考えが浮かんでくるわけだ。

特に最初の、厚生労働省の発表リリースにもあるように、この「相対的貧困率」ってのは、可処分所得を対象に計算されているから、資産や現物給付のことは考えられていないんだな。だから例えば「自分が住む家や自動車を持っていて家賃を支払う必要は無し。財産もがっぽりある。畑仕事をしているから食べるものにもあんまり困らない。可処分所得は低いので貧困層に区分されるけど、全然生活は苦しくないね」という人も貧困率にカウントされてしまう。

「社会実情データ図録」でも言及しているけど、「日本は年齢格差が大きいから相対的貧困率も高く出るという側面があり、このことを無視して貧困度を論ずることは妥当ではない」し、「相対的貧困率」をわざわざ算出して利用、もとい活用しようとするのなら、むしろ「年齢格差・世代間格差」について積極的に動いてもらわねばおかしいよね……という話でまとめて、今趣旨の記事はオシマイ。

ちなみに蛇足として。子供手当ての給付は「その他の現金給付」に該当するので可処分所得を上乗せさせるけど、学費無料化は相対的貧困率の改善には影響を与えないようだね(可処分所得の使い道の一つでしかないからね)。そして代わりに行われる各種減税措置の廃止や増税で、可処分所得は減るから、「子供手当の給付」に連なる一連の政策では、単純に考えても目指している「相対的貧困率の改善」には真っ向から逆行することになるだろうね、きっと。さあどうしよう?

(終わり)

■一連の記事:
【「相対的貧困率」について色々と考えてみる……(1)発表データのグラフ化と二つの貧困率】
【「相対的貧困率」について色々と考えてみる……(2)本当の「貧困」を世界と比べてみる】
【「相対的貧困率」について色々と考えてみる……(3)「経済格差」って単なる格差なのかな】
【「相対的貧困率」について色々と考えてみる……(4)「経済格差」は「世代間格差」!?】

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