新型インフルエンザの拡大懸念が薄化…2009年9月景気動向指数は2か月ぶりの上昇、先行きは3か月ぶりの上昇

2009/10/09 07:31

内閣府は2009年10月8日、2009年9月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月ぶりにわずかではあるが上昇した。先行き指数も3か月ぶりの上昇傾向を見せている。基調判断はやや厳しく、同時に先月と同様の「景気の現状は、厳しいながらも、下げ止まっている」となった(【発表ページ】)。

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大型連休と高速料金引き下げ、晴天が幸い
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめのページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認のこと。

2009年9月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.4ポイントの43.1。
 →2か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」判断が増え、「やや悪くなっている」が減少。
 →家計においては大型連休、高速道路料金の引き下げ、晴天が多かったことで旅行関連でプラスが生じたことや、エコポイント付与、環境対応車へ減税措置の効果が続いていることでプラス。企業は受注や出荷に持ち直しの気配が見られることからプラス。雇用は一部で求人の動きがありプラスに。
・先行き判断DIは先月比プラス0.5ポイントの44.5。
 →3か月ぶりのプラス。
 →家計では新型インフルエンザの拡大懸念が薄れつつあることなどでプラス。一方企業は円高の進行、補正予算の執行見直しに対する影響の懸念から低下。雇用は新卒者への採用に対する懸念からマイナスに。
雇用以外は微妙なところ
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

先月と比べればプラスの項目が多いが、実は雇用以外はプラスになること自体スレスレだったことが分かる。雇用項目はさらなる上昇が期待できそうだが、他の項目は一進一退のようにも見える。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマンズ・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁、あるいはゼロに限りなく近づくのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いていた。今月は全体ではプラスだが各項目ごとの上昇・下落率は大人しく、「踊り場」の感がますます強くなってきた。

・下落傾向から反転。
・「雇用と全体の下落逆転」が
とりあえず確認される。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは回復。
・動きは鈍く、
「踊り場」様相強まる。
ここ一、二年、すなわち2007年の夏における「サブプライムローンショック」以降の下落が「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にぶれがあったのに対し、今回は一様に、しかも急速に落ち込んでいる(2007年後半-2008年中)」状態だったこと、それが「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況を表していることは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融工学危機」)が、多種多様な方面で一斉に経済へ悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも表れている。

今月も含めたここ数か月の動きは、2001年後半以降の大底からの反転をなぞっている感がますます強くなってきた。この傾向が景気回復における「通過儀式」であるのなら、以前から触れているように天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。今月発表分では前月同様に天井感が見え、さらに先月の時点で「交差」現象が確認でき、それが継続状態にある。前回の傾向を踏襲するとすれば、これからしばらくは雇用情勢はやや回復が見られるものの、全体的には再び景気後退が加速することになる。

景気の先行き判断DIについては、先月から転じて上昇した。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

全体はかろうじてプラスだが、家計関連の値で支えていること、それ以外は一様にマイナスなのが分かる。特に雇用関連がマイナスを示しているのが気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を皆が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、ただでさえ大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落としてしまった、家計や企業の先行き心理に与えたのかが分かる。

今月は全体的には家計動向はほぼプラスに移行したものの、企業と雇用がマイナスを示している。特に製造業のマイナスが大きく、円高懸念が強いことが分かる。

そして先月でも触れているが、「現状」同様に上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」、その前提となるクロス・逆転現象が「先行き」でも確認できている。今月は雇用関連がやや下がったものの、いまだにクロス状態にあることは違いない。「現状」「先行き」共に、景気動向は次なるステップに進んだ可能性が高い。……つまり、低迷期の再来である。

「現状そこそこ」「先行き不安」の声が
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・大型連休に前年比で3倍以上の来客数があり、月全体でも前年に比べて好調な数字となった。高速道路料金引下げの影響で遠方からの来客も増えている(テーマパーク)。
・秋の旅行シーズンを迎え、大型連休など外出する要素が多く、2-3か月前に比べると販売量が増えている。新型インフルエンザの影響も小休止した感がある(旅行代理店)。
・大型連休の時期に全館で割引を中心とした企画を実施し、その時だけ売上が好調だった。どうしても値下げ品に客のし好が流れて、定価品の販促企画に対しては反応が鈍い(百貨店)。
・新型ハイブリッド車は今受注しても来年5月以降の登録となる予定で、新車購入補助金の対象にならない見込みではあるが、他の対象車両に受注が流れており、受注総数は前年比で増加が続いている(乗用車販売店)。
・物件の引き合い等はあるが、客はもっと値段が下がるのではないかと慎重になっており、他の業者との価格比較もするので、なかなか成約に至らない。銀行の融資も大分厳しい感じがする(住宅販売会社)。
・天候に恵まれたこともあり、来客数は堅調に推移している。ただし、牛肉や果物といっ
た比較的高額な商品が不振であり、全体的に客単価は低下している(スーパー)。

■先行き
・引き続きエコポイント制度の効果と、待望のパソコンの新OS発売効果で売上の向上が期待される(家電量販店)。
・法人客の予約は低迷しているものの、観光シーズンの予約は前年並みの予約が入ってい
る(観光型ホテル)。
・客からは、年末のボーナスも期待できないという話が聞かれ、経営統合やリストラなど、明るい話題がなく、今後も客の財布のひもは相変わらず固いままである(スナック)。
・マンション、工業物件共に、新築に対する購買意欲が落ちている。また、リニューアル物件も、価格が非常に厳しくなっており、今後は厳しくなる(住関連専門店)。
など、冒頭でも触れたように大型連休や新型インフルエンザ懸念が薄れたこと、これまでの政策の継続効果でそれなりの成果が出ているように見える。その一方、消費者の消費性向や客単価の低下、金融市場の硬直化など、気になる文言も確認できる。

さらに掲載は略するが、特に企業動向で「回復の兆し」という言葉が舞う一方、工事が中止・延期扱いとなっていたり、円高による影響、各種助成金に頼って生き延びているという表現も相次ぎ、今後の政策動向次第ではどのような動きを見せるのか、不安視せざるを得ないコメントも多い。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見えるが、政治要因を起因とする
不安要素が噴出、企業回りで揺さぶり。
前回不況パターンと同じなら
今後「景気は今より少々悪め」な状態に
突入の可能性。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているように、今回の景気悪化(と復調)が、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する可能性がますます高くなってきた。その場合、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数とのかい離(かけはなれること)」現象(反動のためのエネルギーの蓄積)が見られると推測される。2008年12月の値が「大幅なかい離」と判断するにはまだ足りないようにも見えるが、元々理論値としての下限(ゼロ)に近い値で起きているだけに、この程度の「かい離」でも反動エネルギーは十分蓄積されたとも考えられる。

その仮説が正しければ、すでに最大の底値は脱しており、今後は短期的な再下落を経て、横ばい・回復基調が続く可能性は高い。実際先月で「現状」「先行き」ともに、本格的な上昇の事前現象である「全体指数を雇用関連指数がクロスして大きく上向く」の先駆けともいえる「クロス」現象が確認でき、今月もその状況が続いている。あとはこれが継続、下落傾向に至れば、パターン踏襲がより確実なものとなる。

また、本文中でも指摘しているように、底値における値が前回と比べてかなり低い状態にあることから、たとえこのまま上昇・横ばいの傾向を継続したとしても、あるいは前回パターンと同じように今後下落した上で低迷期間を経験するにしても、DI値が50をかなり下回る値で継続する可能性がある(いわゆる「何となく不景気」状態の継続)。

今回の不景気は海外要因に寄るところが大きかった。つまり日本一国だけではどうにもならない項目が多かったといえる。日本国内でどれほど善策を講じても、昨年2008年のリーマンズ・ショックのような海外の「大きなマイナス要因」があれば、すべてを台無しにしてしまう。それほど世界経済はグローバル化が進んでいる。

さらに今後しばらくの間は国外要素に輪をかけるかたちで、国内要素(政治・政策上の不安定感)がマイナスに作用する可能性が高い。少なくともこの一か月の間は、政局・政策・金融市場の観点では、控えめに表現しても「混乱の極み」にあると表現しても過言ではない。海外の経済動向だけでなく国内のさまざまな動きを見極め、正しい情報を元にした正しい判断のもと、景気の流れを慎重に見守り、そして行動する必要があるだろう。

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