製造派遣会社の収益構造例をグラフ化してみる

2009/09/25 04:45

グラフ化で考えるイメージ先に【製造業派遣、スタッフ本人も7割近くが「派遣禁止に反対」】【大企業2割が「海外へ生産移転」……製造業派遣禁止の場合】などで派遣業界企業・スタッフによる調査結果をチェックした際、日本生産技能労務協会のリリースが目に留まった。いわゆる製造業派遣の原則禁止施政方針に対する反対の提言をまとめたものだが、その中に製造派遣会社の収益構造例が記載されていた(【発表リリース、PDF】)。【自分の目の前にあるものがすべてではないことを知る】でも触れている「中抜き」について分かりやすいデータなので、ここにグラフ化してみることにする。

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今データはあくまでも「収益構造例」であり、すべての派遣企業が同じスタイル・配分なわけではない。前提としては

・派遣契約の料金が1600円/時としたケース
・所定労働日数:20日/月
・所定労働時間:8時間/日
・派遣企業の固定費(一般的なもの)
 管理社員4名+事務社員1名+事業所経費(本社経費)
・管理派遣社員人数100人、稼働率100%を想定

とし、派遣社員一人あたりの売り上げに対する配分を示したもの。

まずは、一人当たりの月額売上と、直接の手取りだけを反映させたグラフを生成する。

製造派遣会社の収益構造例
製造派遣会社の収益構造例

派遣社員一人が派遣先で働くことによって、引受先から労務対価として支払われる派遣契約料金は1600円/時。それが8時間×20日で25万6000円。それに対し、「直接」派遣社員が受け取れる基本給は16万8000円。割合にして65.6%。これだけを見れば、「派遣会社は35%も天引きしている。中抜きが多すぎる」と憤慨するかもしれない。

しかし【自分の目の前にあるものがすべてではないことを知る】でも触れているように、企業は魔法を使って何の対価・リスクも負わずに業務を執行できるわけではない。法令に従って有給休暇の給付や安全対策(健康診断など)、雇用・社会保険の負担、さらには教育訓練費、福利厚生費など、「派遣社員に対するコスト」も発生する。派遣会社自身の運営コスト・利益などを勘案すると、上のグラフは次のようになる。

製造派遣会社の収益構造例(細分化)
製造派遣会社の収益構造例(細分化)

グラフの下側のうち、青系統の色の部分は派遣社員に対するもの。交通費や奨励金、福利厚生費、採用経費など、「直接手取りで受け取れる給与」以外にも多種多様なコストがかかっているのが分かる。それらを差し引いたのち、派遣会社本体の運営費(販売管理費)や税金を引き、ようやく派遣会社の利益が計上できるという次第だ。

現実問題として、稼働率100%では無いことに注意
元資料には記述されていないが、注意してほしいのはこのモデルがあくまでも「派遣社員の稼働率100%」を前提とした1人あたりの収益構造を表していること。マッチングシステムの運営を常とする派遣会社でも、すべての派遣社員にまんべんなくフルタイムで仕事を割り当てられるとは限らない。

割り当てが無ければ派遣社員自身の手取りは無くなるが、同時に派遣会社も売り上げを計上できない。それでも雇用保険などの保険料や採用経費、そして会社本体の各種費用は継続して発生する。派遣社員がフルタイムで常に仕事が一杯なら、派遣会社は派遣社員を増やせば増やすほど本体の経費をさほど上げずに利益を上乗せできるが(インターネット系のビジネスと同じようなものだ)、その分稼働率が下がった時のリスクも大きくなる。

上の図で例えれば、派遣社員に割り当てる派遣先が無くとも、1か月あたり法定福利費や福利厚生費、採用経費、販売管理費などで、派遣会社本体側に数万円ほどの費用がかかることになる。



派遣企業の中には青系統の「派遣社員のためのコスト」を不法に(あるいは別名目で)上乗せし、それを派遣会社側にスライドして利益を荒稼ぎしているところもあるという話を聞く。そういった企業は真相を明らかにした上で、糾弾され法的処分を受けてしかるべき。

ただしこのような事例は派遣業界に限ったことでなく、どんな企業でも起きうる話。例えば毎月給与から天引きされる健康保険料は本来企業と本人が折半で負担する仕組みになっているが、本人負担分を企業が勝手に上乗せし、それを会社の他のコスト(例を挙げると会社が受取人の団体保険の掛け金)に回していたという事例などゴロゴロしている。

他にも「派遣社員の直接の取り分」(上記グラフなら16万8000円)を圧縮し、福利厚生なども極力削り、派遣会社本体の経費や利益を上乗せする場合もあるだろう。例えば派遣社員の手取りを1万円分削り、そのまま派遣会社本体側に上乗せすれば、利益は約3倍の9600円程度に跳ね上がる(税金などの再計算があるので、きっかり1万円増えるわけではない)。

しかし度が過ぎるものは、個別に問題視をされるべき。「そういう事例があったから、派遣の仕組みはダメだ、全廃すべきだ」というのは、あまりにも性急・短絡にすぎる気がするのだが。

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