「二分法の罠」の仕組みを図で解説してみる

2009/09/23 16:55

図解イメージ世の中はとかく多種多様な構成要素から出来ていて、ほとんどの場合「イエスかノーか」「上か下か」「黒か白か」と極端な分類が出来るわけではない。色々な選択肢があり、その中から一つを選ぶ、あるいは複数の要素を眺め見て判断する。ところが一方で、人はシンプルで短絡的なモノを望む傾向がある。この習性を巧みに利用(悪用)したのが「二分法の罠」という方法だ。今回はこれを解説してみることにする。

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「二分法の罠」とは、交渉手法・説得手法の一つ。「本来なら多数の選択肢があるにも関わらず、二者択一で相手に迫ることで『どちらかを選ばねばならない』と勝手に思い込ませ、結果的に相手を劣勢に陥らせる」というもの。人の習性として「二者択一」がシンプルで分かりやすいため、本来ならばもっと色々な選択があるにも関わらず、物事を二者択一に分類してしまう(、あるいは他の選択肢を無視させる)わけだ。

具体的な例をあげてみよう。ある地域にA・B・C・Dのコンビニ店があったとする。客入りはAとBが二強状態で、ややAの方が優勢。とはいえCもDも何か問題があるわけではなく、個性が強めなだけの話。日本のセブンイレブン・ローソンをはじめとする各コンビニFC店のようなものだと思えば良い。

ある地域の例。コンビニ店A-Dがひしめき合う。住民はAとBをメインに使っている。
ある地域の例。コンビニ店A-Dがひしめき合う。住民はAとBをメインに使っている。

ある日、コンビニAの本部でトラブルが発生し、社会的に非難されるような事件が発生する。コンビニAそのものに問題があるわけではないのだが、毎日のようにテレビや新聞でA本部の不祥事を伝えている。するとどこからか(実はコンビニBの関係者・熱心な支持者)口コミでこんな話が入るようになる。

「コンビニAの本部はけしからん。お灸を据えねばならない」
「だからB店を使うべきだ。コンビニA本部に思い知らせるにはBを使うべきだ」

「AでなければB」。二者択一というシンプルな行動指針を提示され、「そうか、Aの本部にお灸を据えるにはBを利用すればいいんだ」と単純に考えてしまう。二者択一のシンプルなガイドに誘導され、(Bは何もしておらず、店の実情にも変わりがないのに)住民は「A本部を懲らしめるため」とばかりにBを使う。

「AでなければB」。二者択一というシンプルな行動指針を提示され、住民は「A本部を懲らしめるため」とばかりにBを使う。
「AでなければB」。二者択一というシンプルな行動指針を提示され、住民は「A本部を懲らしめるため」とばかりにBを使う。

実際には物事は単純に割り切れるわけではない。「A本部を懲らしめる・お灸を据える」のなら、A店の御意見箱に意見を入れるのでも良いし、本部へ間接的にお灸を据えるためにA店の不買運動をするにしても、それが「イコールBを利用」ではない。コンビニCやコンビニDを使っても良いし、何なら隣接地域に買い物へ出ても良いし、コンビニそのものを使わなくともよい(スーパーやデパート、雑貨店も選択肢にはある)。

かくしてコンビニBは複雑な現実を「こちらかあちらか」という形で単純化して、二分法で提示することで、住民に他の選択肢を覆い隠し、自らを有利に・住民たちを劣勢に追い込んだわけだ。

実際には「Aを選択しない」イコール「Bを選択する」ではない。CやDを選んだり、他の地域まで足を運ぶこともできる。「AでなければB」という単純化によって、上の図では住民たちが錯覚させられしまっている。
実際には「Aを選択しない」イコール「Bを選択する」ではない。CやDを選んだり、他の地域まで足を運ぶこともできる。「AでなければB」という単純化によって、上の図では住民たちが錯覚させられしまっている。

「Aを選択しない」
イコール
「Bを選択する」
ではない
物事はそんなに単純なものではない。しかし人は得てして物事を両極端で見がち。その方がシンプルで分かりやすく、判断もしやすいからだ。さらにアピールする側としてはその本性に訴えることになるので、受けやすい。

場合によっては【「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」-あるマンガに見る、情報統制と世論誘導】で解説したように、意図的に見せる部分と見せない部分を振り分けて「良い部分」だけで相手との違いを比較し、結果的に相手の判断そのものを誤らせる場合もある。例えば「コンビニBは実はお弁当の質が低い。でもその部分はあえて隠して口コミを広めよう」という具合である。

あまりにも提示される選択肢がシンプルすぎる場合、「本当にその選択肢しかないのか、自分の意思を通すにはその選択肢以外には考えられないのか」(今回の例なら「A本部にお灸を据える」イコール「コンビニBを利用」で良いのか)と疑うべきだろう。



ちなみにこの「二分法の罠」に引っ掛からないためには、三つ目の図にあるようにその他の選択肢を探す、あるいは提示すること。元々二者択一にした時点で、提示側の利益が優先されているのだから(どちらを選んでも提示側に損は無い)、そのまま選んでしまっては提示側の思うがまま。もっとシンプルな例なら「2割値下げしろ、さもなきゃ交渉打ち切りだ」と提示された場合、「それなら間をとって1割値下げでいかがですか。一年分まとめて先払いして下さるのならさらに5%下げますよ」と逆提案するという具合だ。

多少手法は違えど、この「二分法の罠」は結構あちこちで、生活の身近なところから、全国単位の事柄にまで使われる(ある意味悪用される)場合がある。……もし思い当たる節があるのなら、自分自身でしっかりと情報を見極め、今一度じっくりと考えなおしてみるべきだろう。

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