【更新】大企業役員のボーナスや給与と企業業績の関係をグラフ化してみる

2009/09/12 18:53

多額の現金イメージ先に【大企業の配当金と人件費の関係をグラフ化してみる】で国内大企業の配当金や人件費の推移を色々な視点からグラフ化した。実はこの際、グラフを生成するためにデータを入力するにあたり、他にもいくつの項目について入力を行い、検証が出来るようにしていた。折しも先の記事を掲載した後、「役員賞与(ボーナス)ぼったくり過ぎだろ」なる主旨の、「こちらに文句を言われても……」という反応しか返すことのできない「ご意見」をいただいた。せっかくなので役員賞与などに関するグラフをいくつか描き起こしてみることにする。

スポンサードリンク


役員のボーナスと経常利益
データの大本は財務省のシンクタンク【財務総合政策研究所】の公式サイトで掲載されている、【法人企業統計調査】で確認できるもの。調査対象や条件などは[調査の概要]で確認してほしいが、原則的に資本金1000万円以上の営利企業を対象とし、資本金が大きなところは回答データを全部、小さなところは等確率系統抽出により抽出している。そして今回は掲載されているデータのうち、バックナンバーなども合わせ、1960年度分から2008年度分までについてグラフ化のための再入力を行った。

なお今回の記事ではいくつか注意事項がある。2005年7月26日公布・2006年5月1日施行の(新)会社法により、役員賞与(役員に対するボーナス)の取り扱いが変更された。それまでは役員賞与は「企業の利益を分配処分する」ものとして考えられてたものが、施行以降は役員給与(報酬)同様に「費用項目」扱いとなっている。しかも移行期間が設けられているため、役員賞与のデータについて2006年度分はおかしな値が出ているし、2007年度以降のと2005年度以前のものは純粋な比較はできない(役員賞与であることに違いは無い)。それらを頭に入れた上で見てほしい。

新会社法施行以降はともかく、それ以前は「役員賞与は最終利益の分配先の一つ」である以上、売上高ではなく経常利益との比率で推移を考えるべき(あくまでも「賞」与なのだから)。そこで、単純な役員賞与の推移の他に、経常利益に対する役員賞与の比率推移をグラフとして生成する(本来なら純利益比率にすべきなのだがデータ入力の簡略化などの事情による)。

役員賞与推移(単位:億円)
役員賞与推移(単位:億円)

経常利益に対する役員賞与比率推移
経常利益に対する役員賞与比率推移

2006年の異常値はともかく、金額そのものは年と共に右肩上がり。これは物価上昇率を考慮に入れていないから当然といえば当然(突然「ボーナスを1960年代の水準金額で決定します」と言われたら、その会社では暴動が起きるに違いない)。

それよりも注目すべきは「経常利益に対する役員賞与比率推移」。1975年度の異常値は経常利益が大きく減ったにも関わらず役員賞与がさほど変化していないのが原因。その理由は不明だが、1975年といえばベトナム戦争の終結などが出来事として確認できる。ただし「特需」は朝鮮戦争ほどでは無かったはずであるし、どうもよくわからないというのが実情。

ともあれ「経常利益に対する役員賞与比率推移」は、全体的には4%を上限とし、少しずつではあるが増加どころかむしろ減少傾向にあることが分かる。「役員が年々ボーナスを使って利益のむしり取り度を増やしている」という考えは、少なくとも全体的なレベルでは認識違いに過ぎない。

役員給与(報酬)と従業員給与
「役員はボーナス以外に従業員より割高な報酬だってもらってるじゃないか、そちらの方の取り分を増やしているのでは!?」という声が聴こえた気がするので、そちらも調べてみることにする。元データでは「役員給与」という表記をしているが、一般的には「役員報酬」の方が通りが良いだろう。

まずは絶対額。こちらも物価上昇率は考慮していないので、右肩上がりになるのは当然。

役員給与(報酬)推移(単位:億円)
役員給与(報酬)推移(単位:億円)

……のはずなのだが、1990年代からほぼ横ばいに推移している。物価上昇率もこのあたりからほぼゼロ(つまり消費者物価指数が横ばい)を維持しており、実質役員報酬総額はほとんど変化していないことが分かる。その間も企業の売り上げはそれなりに伸びているから……

売上高に対する役員給与(報酬)比率推移
売上高に対する役員給与(報酬)比率推移

当然のことながら「売上高に対する役員給与(報酬)比率推移」は減少を見せることになる。

さらにこの値について、同じく費用項目扱いの「従業員給与比率」と比較してみることにする。ただし元々従業員と役員数は大きく違うため、単純に比較したのではあまり意味が無い。そこで、それぞれの値について2000年度を100とした場合の推移をグラフ化する。

売上高に対する「役員給与(報酬)比率」と「従業員給与比率」推移
売上高に対する「役員給与(報酬)比率」と「従業員給与比率」推移

経年と共に「売上高に対する役員給与(報酬)比率推移」が上がっていくが、これは逆にいえば(2000年度を100としているため)それまでの比率が低かったことをも意味する。そして2000年度以降は、短い「ほぼ横ばい」の時期を経て、景気後退のあおりを受けてか、共に下落する傾向を見せている。

本当に役員達は「搾取」をしているのか
冒頭の「役員賞与(ボーナス)ぼったくり過ぎだろ」なる主旨のメールをはじめ、時折報じられる企業役員の賞与や報酬を耳にし、怒りをぶちまける人も少なくない。中には文中にあるように「こっそり自分の取り分を少しずつ不当に増やしているんだろう」と声高に訴える人もいる。しかし企業全体の売上や利益、従業員の給与推移と比してみれば、それが不当なものでも無ければ、役員たちが「搾取を続ける悪しきブルジョワ」で無いことも分かる。

不当な「搾取」「高額報酬」には
個別に非難・追求をすべき。
「木を見て森を見ず」ではいけない。
彼らは(一部を除けば)さまざまなリスクを背負い、能力を発揮し、経験を積み、様々なものを犠牲として、言い換えれば「高いチップ」を支払い、その成功報酬を受けているに過ぎない(リターンを受け取れた役員の陰には、場から追われる羽目になった多くの「元役員」がいることを忘れてはならない)。

昨今の金融「工学」危機において問題視されている、証券銀行社員・役員らのケタ違いな報酬・賞与のレベルになれば話は別だが、それらについては個別に非難や追求などを行えばよいだけの話。世間一般の役員自身や役員報酬・賞与、企業すべてを不平不満の対象とすべきではない。

にも関わらずこの類の半ば理不尽な誹謗中傷が後を絶たないのは、「特定の木だけを見せて森を見させない」報じられ方に大きな要因があるものと思われる(参照:【「『報道しないこと』これがマスコミ最強の力だよ」-あるマンガに見る、情報統制と世論誘導】)。

それと共に、「自分の目に留まったもの、自分の周囲にあることが、世間全体すべてに共通していることだ」と誤認してしまうのも原因だろう。例えば、たまたま自分の会社の役員が不当なボーナスを得ていることを知ると、「世間の役員も皆こんなものだろう」と思ってしまうというものだ。

目の前にあるもの、視野に映るものだけで判断すると、その裏に隠れているさまざまな真実から目を伏せることになる。それを無視して判断・行動すると、弊害が自分自身に何倍にもなって返ってくることになる。繰り返しになるが、「木を見て森を見ず」的な考え・行動は慎むべきである。



先の【大企業の配当金と人件費の関係をグラフ化してみる】で最後に「企業は備えの姿勢を見せているのでは」的な主旨のまとめをしたところ、「内部留保もその類かな」という意見があった。せっかくなので内部留保(利益に対する処分先の一つ)の推移もグラフ化しておく。こちらも2000年度を100とした値である。

経常利益に対する内部留保比率(2000年度を100とした場合)
経常利益に対する内部留保比率(2000年度を100とした場合)

2000年における、最終利益から内部留保に回された総額は約2.7兆円。これを100にしているのでやや「ぶれ」が生じているが、基本的にマイナスの値を示している年度は「内部留保の切り崩し」を行っている。簡単にいえば「貯金をおろしている」わけだ。ざっとグラフを見ると、全体的に経常利益に対して内部留保比率が1990年あたりから下落傾向にあるのが分かる。これは【上場企業の「外国人」持ち株比率の変化をグラフ化してみる】でも触れているように、配当への圧力が強まったことが原因。

気になるのは1990年代の下落傾向と共に「内部留保の切り崩し」の機会が増えていること。家計で例えれば、これまで毎月少しずつ貯金を積み重ねることが出来たのが、最近になって「貯金できた月」「貯金を切り崩さねばならない月」が交互にやってくるようになったことを意味する。これもまた【日銀レポートによる「なぜ好景気でも賃金は上がらなかったのか」】で触れた、企業の不安要素の一因なのかもしれない。

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー